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アンケートを渡さないという単純な問題ではない

1月24日千葉県野田市の小学4年生の女子児童が、父親による暴行を受け、自宅の浴室で死亡した事件がありました。その女子児童が、虐待被害を学校へ訴えたアンケートを加害者である父親に教育委員会が渡していたということです。

 

死亡小4女児の「父からいじめ」の訴え 市教委が父親に渡す|NHK NEWS WEB

学校側は「個人情報なので本人の同意もない中、父親でも見せることはできない」と拒否しましたが、その3日後に栗原容疑者が心愛さんの同意を取ったとする書類を持って市の教育委員会を訪れたため、教育委員会はアンケートのコピーを渡したということです。 コピーを渡すことについて、児童相談所には相談していなかったということです。 これについて野田市は「一時保護に対する父親の怒りを抑えるためやむなくコピーを渡してしまったが、著しく配慮を欠いた対応だった。亡くなった心愛さんに大変申し訳なく思っています」としています。

 

アンケートには、「お父さんにぼう力を受けています。夜中に起こされたり、起きているときにけられたりたたかれたりされています。先生、どうにかできませんか。」と書かれていたということです。「たたかれた」「あたま、せなか、首をけられて今もいたい」「なぐられる 10回(こぶし)」などとも書かれていたようです。

 

自分から被害を訴えたということが素晴らしいことです。しかし、それが最終的に良い結果につながらなかったことが本当に残念です。

 

そんなふうに感じた人が多いのだと思いますが、ネットでは野田市教育委員会がアンケートのコピーを加害者である父親に渡してしまったことに批判が多いようです。

 

女児が暴力訴えたアンケートを父親に ネット上でさまざまな声|NHK NEWS WEB

千葉県野田市の教育委員会が、女の子が暴力の被害を訴えたアンケートの回答のコピーを逮捕された父親に渡したことについて、インターネットのSNS上では、批判の声が多く上がっています。

 

 批判したい気持ちはごく当然だと思います。しかし、実はアンケートのコピーを渡さなければ事態が住子でも良い方向へ向かったのかどうかは、分かりません。

 

 アンケートを渡さなかった場合、父親には具体的な回答内容が分かりません。そのため、父親は不安や怒りを強く感じてしまうと想像されます。その不安や怒りが、教育委員会だけにぶつけられる場合は女子児童への被害が少なくなるかもしれません。

 

 しかし、その怒りや不安が女子児童に対してぶつけられてしまう可能性もある考えるべきです。その場合、女子児童への暴力がさらにひどくなってしまいます。

 

 つまり、アンケートを渡さなかった場合、女子児童への暴力がさらにひどくなってしまった可能性もあるのです。

 

アンケートを渡すのか、渡さないのか、という単純な問題ではないのです。

 

 アンケートを渡したらどうなるのか、アンケートを渡さなかったらどうなるのか、ということを全体的に、考えて、トータルで支援していかなくてはならないのです。

 

 そのためには、児童相談所と学校、教育委員会が、細かく情報共有・協議を続けていく必要があります。多くの人が指摘していますが、学校も児童相談所も、専門性を持ったスタッフのマンパワーが足りないのです。

 

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