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傾聴とは、相手を理解しようとして聴くこと

 最近、「傾聴」が、注目されてきています。ビジネスの中でも重視されてきたり、家庭の中でも大切だといわれています。物事が事務的に進んでしまい、人間関係が希薄になっていることが背景にあり、傾聴が重視されるようになったと言われています。

 

ところで、傾聴とは何でしょうか? 何が傾聴で、何が傾聴ではないでしょうか?

 

私たちが、人の話を聴くときには、さまざまな聞き方をするものです。例えば、高額の買い物をするときには、販売する側の説明を聞き漏らさず、その内容を理解しようとして聞いています。また、嫌いな人の話は、あまり真剣に聞かず、聞き流すように聞くこともあると思います。

 

後者の聞き流す聞き方は、もちろん傾聴ではありません。では、前者の説明を理解しようとして聞く聞き方は傾聴でしょうか?(少しずつ考えていきます)

 

実は、前者の説明を理解しようとして聞くことも傾聴ではありません。辞書で「傾聴」を調べると、「耳を傾けて熱心に聞くこと」「真剣に聞くこと」などという意味がかかれています。「耳を傾けて熱心に」や「真剣に」ということから、聞く側の心からの態度や姿勢が大切だということがわかります。

 

傾聴する

なぜ傾聴するのか?

 

 実は、傾聴とは何かを考えるためには、なぜ傾聴するのか?について考えていくことが必要です。相手が話をしているときに、私たちはなぜ傾聴するのでしょうか? 相手を大切に思っているから、相手の話を傾聴しようとしているのです。相手を大切に思っているというのは、相手の肩書を大切に思っているのではありません。相手の気持ちや心を大切に思っているのです。そういうときに、相手の話を傾聴するのです。

 

改めて、傾聴とは何か

 

つまり、傾聴とは、相手の話の内容を理解しようとして相手の話を聞いているのではありません。相手の気持ちや心を受け止めようとして聞いているのです。

 つまり、最初の方で例に出した、【高額の買い物をするときに一生懸命に話を聴いている】のは、傾聴ではありません。

 

傾聴の重要なポイント

 

 相手の話の内容を理解しようとして聞くのではなく、相手の気持ちや心を受けとめようとして聞くためには、どんなことを大切に話を聴いていけばよいでしょうか?

  • 相手の話の内容に関心を持つのではなく、相手の関心に関心を持って話を聴く
  • 相手の話の内容ではなく、相手の心の動きに注目して話を聴く
  • 自分の聴きたいことではなく、相手の話したいことを聴こうとする
  • 相手が理解してほしいと思っていることを理解しようとして聴く

具体例を通して考える

 想像してみてください。友達のAさんが、あなたにこんなことを話してきました。

  

  最近ずっと歯が痛いんだよね。なんか、ずーっと鈍い感じで痛くて・・・、気になってたんだけど・・・。でも、どんどん痛くなるわけじゃなくて、同じような感じで、ずっと痛いんだよなぁ・・・。どんどん痛くなるんだったら、まずいと思って、歯医者に行こうかなってなるでしょ。でも、なんか行かなきゃっていう感じにならないし、そのままなんだけど・・・・。今朝からは、全然痛くなくって、あれっ?って感じ。そういうことってある? 

 

 さて、あなたは、どんなふうに、Aさんのお話を聴いているでしょうか?

 

 「そんなことがあったよ(なかったよ)」と言いたくなった人も多いかもしれません。この場合は、相手の心の動きではなく、話の内容に注目して聞いているかもしれません。

 

 「歯医者に行ったほうがいいんじゃない」と言いたくなった人も多いかもしれません。この場合は、相手の関心に関心を持つのではなく、相手の話の内容に関心をもって聞いているのかもしれません。

 

 「どの歯が痛いの?」とか、「今も痛いの?」などと質問したくなった人も多いかもしれません。この場合は、相手の話したいことではなく、自分の聞きたいことを聴こうとしているかもしれません。

 

 「何を理解してほしくて話しているんだろう?」「Aさんにモヤモヤした気分が残ってる感じがするなあ」「Aさんにとって大事なポイントってどこなんだろう」「不思議な体験を伝えたいのかなあ?」などということが同時に心の中に浮かんできつつ、Aさんの話を聴いている場合は、「傾聴」に近い聴き方をしているのかもしれません。

 

 こんなふうに聴いている場合、「そういうことある?」という質問に答えるのではなくて、「不思議な体験なのかなぁ」などと、こちらの心の中に浮かんできたことを伝えるかもしれません。

 

傾聴の基本

以上のことを踏まえて、傾聴の基本について、まとめてみました。傾聴の基本は、相手が相手のペースで話すことについていくことです。そして、出来事の説明ではなく、相手の体験(出来事によって生じた心の動き)を聴くことが大切です。 

相手を理解しようとして聴く

良い悪いなどの価値基準で判断するのではなく、相手の話を考えや気持ち、そうせざるを得なかった理由などを理解しようとして聴くことが大切です。

 

話しやすい雰囲気を心がける

適度な距離を取り、ゆったり関わることが大切です。

 

あいづちとうなずきを返す

あいづちやうなずきは、聴いていることや伝わってきていることを相手に伝える、非常に重要な反応です。通常よりも、ゆっくりと大きな動作を心がけると良いと思われます。

 

適度なアイコンタクト

じっと見つめられると、緊張して話しにくくなります。相手の話の内容に応じて、視線が動くことは自然です。相手の、仕草や動作を見ることも大切です。話の重要なポイントでは、しっかりと目を見て聴くことが大切です。

 

間や沈黙を大切にする

言葉が出てくるまでに時間がかかることもあるため、ゆっくり間を取って関わるようにします。

 

気持ちを受け取るように聴く

気持ちに注目して、その気持ちを渡してもらって、こちらが受け取るように聴ことが大切です。また、場合によっては、「辛かったですね」など、気持ちが伝わってきたことを言葉で返すことも必要です。

  

傾聴になっていない聴き方

 

次のような聴き方は、聴いている側が良く聴いているつもりでも、傾聴になっていない聴き方です。聴く側と話す側の心の溝が生じてしまいがちです。

 

    • 批判、否定、反論、アドバイス、説得、同情

    • 聴く側が話して、話す側が聴いている

    • 相手の話が終わらないうちに、遮って話す

    • 相槌やうなずきが少ない(反応が少ない)

    • 他の事に気を取られていて、相手の話に集中していない

    • 間が空いたり、沈黙が生じたりすると、我慢できずに話をしてしまう

    • 自分の興味を優先して自分の聴きたいことを質問する

 

    • 話を誘導して聴く

 

まとめ

傾聴とは、相手の関心に関心を持ち、相手の心の動きに注目し、相手の話したいこと・相手が理解してほしいと思っていることを理解しようとして聴くことです。

 

 

傾聴を学びたい方へ

傾聴は、自分一人で身に着けたり磨いたりすることは、非常に難しいものです。自分自身では、自分の聴き方の癖や改善点に気づきにくいからです。

一番のお勧めの方法は、だれかに協力してもらって、話す役割を担当してもらいます。自分自身が傾聴する役割を取って、相手の話を傾聴します。その時のやり取りを10分程度の時間を録音します。そして、そのやり取りを、正確に文字に起こします。その文字に起こしたもの(逐語記録といいます)と、録音データをもとに、熟練したカウンセラーに指導してもらいます。

この方法が、傾聴する力を身に着けて、磨いていくためには、一番効果的です。

 

リソースポートでは、主として専門職の皆様を対象に、上述のようなサービスを提供しております。

傾聴する力を磨きたい方には、ぜひ、お勧めいたします。

 

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