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小学校1・2年生(低学年)の登校しぶりのサポート

 

 小学校低学年の子どもたちの不登校が少しずつ増えているようです。また、不登校まで行かないけれども、学校に行きづらい「登校しぶり」の子どもたちも、クラスに何人かいることもよく見かけます。

 

 

どうして、朝だけ、行きしぶるの?

 

 登校しぶりの子どもたちは、朝、学校に連れて行く時には、大泣きをして離れられないのに、学校から帰ってくると「楽しかった」と話してくれることも多いかもしれません。親としては、「どうして、朝はあんなに嫌がっていたのに!?」などと不思議に思うのが当然だと思います。

 

 朝に連れて行くのは大変なことが多いので、「無理矢理にでも連れて行くのが良いか?」、「朝泣き叫んだりしているのを無理に連れて行くのは逆効果にならないか?」などと、悩んでしまうことが自然だと思います。

 

 どんなふうに考えて、どんなふうにサポートしたら良いかを解説します。

 

 

学校の教室にある勉強机とイス

疲れがたまっていることが登校しぶりにつながる

 

 朝、学校に行くときには大泣きしたりぐずったりするのに、楽しく過ごしてくるというのは、大人から見るとわけが分からないかもしれません。まずは、疲れがたまっていると考えると良いと思います。

 

 学校は楽しいところですが、子どもたちにとっては、すごく疲れるところなのです。楽しい活動でも疲れるというのは、大人でも同じです。子ども場合(特に低学年の場合)は、それがはっきりと出てくるのだと考えられます。

 また、年齢が低い子どもは、疲れたときには大人に甘えたり頼ったりすることが普通です。例えば、ショッピングセンターに買い物に行ったときに、子どもは疲れてくると、ぐずったり泣いたりすることが良くあると思います。

 

負担を減らして、睡眠を大切にして疲れをためない

 そういったことと同じで、朝学校に行くときにぐずったり泣いたりするのは、疲れが十分に解消できなくて、どんどんたまってきていると考えると良いと思います。学校では、疲れていても先生や他の子どもたちからの働きかけがあるため刺激も多く、頑張って活動するしかありません。頑張れば楽しいのですが、疲れもさらに大きくなります。

 

 そのため、低学年の子どもたちの登校しぶりの場合は、疲れをためないことが本当に大切です。毎日、しっかりと睡眠(10時間以上)をとることが基本です。どうしても夜寝るのが遅くなってしまう場合は、先生と話して宿題をなくしてもらうか少なくしてもらうことも良い方法です。また、疲れをためないために、毎日給食後には帰るとか、早めの下校をしばらく続けてみることもお勧めです。

 

 

ファミリーサポートを活用する

 また、放課後児童クラブ(児童クラブ、学童クラブ、学童保育)を利用している場合も、疲れが溜まりやすいと思います。放課後児童クラブは一部屋に集まっている人数が、学校の教室よりも多いこともあります。また、学校の授業では静かに座って勉強する時間が大半ですが、放課後児童クラブでは様々な活動・行動をしている子どもがいると思います。そういう意味で、刺激が多く疲れやすい場面です。そのため、放課後児童クラブを利用している場合は、朝からの学校での疲れだけではなく、夕方からの放課後児童クラブでの疲れが加わってきますので、疲れが溜まりやすいと思います。

 

 お仕事をしている保護者の方も多いと思いますので、なかなか放課後児童クラブをやめることも、休ませることも難しいと思います。その代わりとして、ファミリーサポート事業を活用することもひとつの方法だと思います。地域の中での相互援助活動として、登録されている有償ボランティアの人が、【放課後児童クラブ等までの送迎】、【学校の放課後、買い物等の外出の際の子どもの預かり】などを行ってくれるという事業です。

ファミリーサポートセンターについて(子ども家庭庁)

 

放課後児童クラブを時々はお休みをして、ファミリーサポーター(有償ボランティアの人)の自宅で過ごさせてもらうことも、疲れをためないために良い方法かもしれません。子どもと有償ボランティアの人との相性など、色々とハードルはあると思いますが、検討の余地があると思います。

 

 

つながりを強めてサポート

 また、低学年の子どもたちは、親と離れるときに不安を感じがちです。それが、登校しぶりにつながることも多いと思います。いわゆる「分離不安」と言われていることです。頑張って離れさせようとする働きかけが多いと思いますが、かえって離れにくくなります。反対にしっかりとつながっている感覚が育ってくると離れやすくなります。そのため、親とのつながりを強めることが大切になります。

 

親が仕事をしているイメージが持てるようにサポートする

 

 低学年の子どもたちは、親が仕事に行っているというイメージを持ちにくいことがほとんどです。親が家で仕事をしている場合は、子どももそれの様子を見かけることが多いと思います。そうすると、家から(親から)離れていても、親が家で仕事をしているイメージを持つことができます。

 

 親が仕事に行っている場合は、子どもは意外と親が仕事をしているイメージを持つことができません。高学年になれば、テレビなどから得た知識や様々な体験から、親が仕事をしているイメージが少し持てるようになります。しかし、低学年の子どもたちは、「仕事」とか「会社」というのは、よく分かっていないことがほとんどです。どこにいて、どんな事をしているか、など具体的な映像のようなものは思い浮かばないことがほとんどだと思います。極端に言えば、離れてからお迎えに来てくれるまでは、親の存在感が空白になってしまうのです。

 

 そこで、保護者の方がお仕事をしている場所に実際に行ってみるとか、仕事場の様子などを写真に撮って子どもに見せてみるとか、そういう方法で子どもにイメージを持ってもらうということも良い方法だと思います。子どもが親から離れるときに、「お父さん・お母さんは、あそこで、あんなふうに仕事をしているんだなぁ」とイメージできれば、親の存在感が空白になってしまうようなことは避けられると思います。寂しくても、親の姿が心の中に浮かぶことで、少しは寂しさに振り回されにくくなると思います。

 

 

つながりを確認できるグッズを活用する

 また、親とのつながりを確認できるような物を持たせることもひとつの方法です。例えば、休みの日に一緒にお出かけをして、おそろいのハンカチを買うといういうはお勧めです。親と子でおそろいのハンカチを持って、親は会社へ出勤し、子どもは学校へ登校するのです。ハンカチを使うときに親の存在感をあらためて感じて、寂しさが小さくなると考えられます。

 実は、おそろいのハンカチを一緒に選んで一緒に買うことが大切です。一緒に選んだという体験が記憶に残るため、親とのつながりを感じやすくなります。

 

 また、キャラクターの小さなぬいぐるみのキーホルダーを一緒に買うこともお勧めです。それを、ひとつは親が持っていき、もう一つは子どもがランドセルにつけるという方法があります。また、両方を子どもが持って行くことでもOKです。

 

 学校に行く時に、親がそのキャラクターのぬいぐるみに話しかけて、子どもを助けてあげるようにお願いすると良いと思います。また、学校から帰ってきたら、学校でどんなふうに頑張っていたかをキャラクターのぬいぐるみから話を聴くようにしても良いと思います。ぬいぐるみに耳打ちをしてもらって、それを「うん、うん。そうなんだ~。」「○○ちゃんは、がんばってたんだねぇ」「見守ってくれて、ありがとう」などと子どもに聞こえるようにお話しするのは、お勧めです。

 

 キャラクターのぬいぐるみをぬいぐるみを通して、子どもと親がつながっている感覚が強くなると思います。

 

 

まとめ

 登校しぶりの子どもたちは、疲れがたまっていることがほとんどです。疲れをためないために、宿題を少なくしてもらう、早めに帰るなどの負担を減らすことがひとつの方法です。また、その日の疲れを解消するためには、睡眠は大切です。放課後児童クラブは疲れる場面ですので、ファミリーサポートを利用することもひとつです。

 

 低学年の登校しぶりの場合、子どもとのつながりを強めるような工夫もひとつです。親が仕事をしているというイメージを強めるように、写真をとって見せてみるなどの方法も良い方法です。また、ハンカチやぬいぐるみを一緒に買って、子どもがそれを学校まで持って行くのもひとつです。

 

この記事の執筆

半田一郎(公認心理師、臨床心理士、学校心理士スーパーバイザー)

 

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