解決志向アプローチとは

 

 解決志向アプローチ(Solution Focused Approach)とは、アメリカのBFTC(Brief Family Therapy Center)で研究され、 スティーブ・ド・シェイザー(Steve de Shazer)、インスー・キム・バーグ(Insoo Kim Berg)を中心に開発されたカウンセリング(心理療法)の理論です。 家族療法にルーツを持つ短期療法(ブリーフセラピー:brief therapy)の1つです。 ソリューションフォーカスアプローチや、解決志向ブリーフセラピー(Solution Focused Brief Therapy)とも言われ、 SFAやSFBTと略されることも良くあります。 

 

 従来のカウンセリングの考え方では、クライエント(相談に来た人)の悩みや問題に注目します。 そして、その原因をカウンセラーとクライエントが協働して探っていきます。それを通して、症状や悩みを軽減し、 問題を取り除いていくことを目指してカウンセリングを進めていくことになります。 

 

 

 解決志向アプローチでは、クライエントの持つ問題ではなく、元々持っているリソース(資源・資質)に注目します。 そして、それを活かし、クライエントが求めている、より良い状態や快適な状態、望ましい自分自身を明確にしていきます。 それを通して、クライエントは自然とより良い状態や快適な状態、望ましい自分自身に近づいていくのです。

 

解決志向アプローチの考え方や姿勢

 

 解決志向アプローチには、特徴的な考え方や捉え方があります。

  

解決志向アプローチの中心哲学

 

 ルール1 上手くいっているなら、変えようとするな

 ルール2 一度でも上手くいったなら、またそれをせよ

 ルール3 上手くいかないなら、何か違うことをせよ

 

 この考え方は、実存主義哲学にルーツがあり、3つのグランドルールと呼ばれています。 人は問題に悩まされているときには、この3つのルールのいずれかに反した行動を取っているものです。 例えば、叱っても叱っても子どもの問題行動が減らないにもかかわらず、余計に叱って子どもを変えようとするような場合があります。 この場合は、さらに叱っても良い変化は生じないと考えられますが、なかなか別の行動をとることは難しいものです。 こういった場合は、知らず知らずのうちにルール3に反した行動をとってしまっているのです。

 

 

変化の重視

 

 解決志向アプローチでは、「変化は絶えず生じていて、変化は必然である」と考えます。 この世の中に、変化しないものはありません。例えば、人間は成長します。社会も変動します。 時間は移り変わり、全ての物事は変化し続けるのです。しかし、一般には人はなかなか変わらないと思われています。 実は、変化しないということは、そこに変化しないような力が働いていると考えられます。 変化しないことが自然なのではなく、変化することが自然の摂理なのです。 人が問題や悩みに陥っている場合には、もうこの問題はずっと変化しないと捉えがちです。 しかし、変化は必然なのですから、問題や悩みもどんどん変わっていくと考えるのです。 

また、解決志向アプローチでは、「小さな変化は、大きな変化を生み出す」と考えます。 小さな雪玉が、雪の積もった斜面を転がり落ちていくことを想像して下さい。 小さかった雪玉は、どんどん大きくなりながら、斜面を転がり落ちていくことになるでしょう。 問題や悩みを大きく改善することを考えるのではなく、小さな変化をおこすことが、さらに大きな良い変化につながっていくのです。

 

 

クライエントこそ専門家であるという姿勢

 

 解決志向アプローチでは、「クライエントこそクライエントの人生の専門家である」と考えます。ともすれば、カウンセラーという専門家は、自分が正しいと考えがちです。もちろん、カウンセラーはカウンセリングの専門家です。しかし、クライエントの人生についての専門家ではありません。クライエントこそクライエントの人生の専門家なのです。だからこそ、解決志向アプローチは、クライエントの考え方や価値観について、クライエントから教えてもらうことが大切にします。こういった姿勢は、「Not Knowing の 姿勢」と呼ばれています。

 

解決志向アプローチの重要概念

解決像

 

 解決像とは、クライエント自身が望んでいる、より良い状態や、快適な状態、望ましい自分自身についてのイメージです。相談に訪れたクライエントは、悩みや問題に気持ちを奪われてしまっていることが多いので、自分自身が何を望んでいるのか、どうなりたいのかについて明確に捉えていないことが多いものです。

 解決志向アプローチでは、カウンセラーが色々な質問を工夫して、クライエントの心の中に眠っている解決像が明確になるように働きかけていきます。このプロセスは「解決像の構築」と呼ばれます。カウンセラーが主導となって解決像を構築するのではなく、クライエントが自分の解決像を自分で発見できるように支えていくことがカウンセラーの役割です。

 また、解決像は3つのレベルで理解することができます。第一のレベルは、義務や必要のレベルの解決像です。「~しなければならない」という言葉で表現されるような解決像です。第二のレベルは、願望や希望のレベルの解決像です。「~したい」という言葉で表現されるような解決像です。この2つのレベルの解決像は、言外に「でも、できない」とか「でも、むずかしい」などというニュアンスを含んでいます。第三のレベルの解決像は、「必然的進行」と呼ばれる解決像です。未来の自分についての「~する」「~している」などと断定した表現が特徴です。「当然そうなる」というニュアンスが含まれています。「必然的進行」レベルの解決像を構築していくことが大切です。

 また、解決像は具体的で自分自身のことについて肯定的な言い方で表現されていることが大切です。そういった解決像を持つことが、クライエントが解決へとより近づいていくことになります。

 

リソース

 

 リソース(resource)とは「資源」という意味です。リソースを活用することを通して、クライエントが解決へと近づいていくのです。リソースには、クライエント自身が持っている内的なリソースと、クライエントの周囲にある外的なリソースの2つがあります。良い面や良い点・得意なこと・好きなこと・秀でた能力のように役に立つような個人の資質は、明らかに(内的)リソースです。あるいは、助けてくれる友人や家族・所有しているツールや物品のように助けになる人や物事は、明らかに(外的)リソースです。しかし、それだけではなく、問題や症状と関連している事柄、あるいは問題や症状そのものであっても、クライエントにとって有効に活用することができるのであれば、それはリソースとなります。リソースとは、資源です。「活用できる」ということが大切なのです。

 クライエントは、問題や悩みを抱えている存在ですが、同時に、リソースをたくさん持っている(リソースフルな)存在です。解決志向アプローチにはクライエントの持っているリソースを信頼する姿勢が根本にあります。

 

 

関係性のアセスメント

 

 解決志向アプローチでは、カウンセラーとクライエントの関係性を重視します。また、クライエントこそクライエントの人生の専門家ですから、カウンセラーがクライエントに余計な介入をすることはクライエントがより良い状態や快適な状態を妨げてしまう危険性もあります。そのためには、カウンセラーとクライエントの関係性をアセスメントすることが必要となります。

 解決志向アプローチでは、カウンセラーとクライエントの関係性を3種類に分けて捉えます。第一の関係性は、ビジター関係です。例えば、親から無理矢理カウンセリングルームに連れてこられた不登校の子どもとの関係性です。ちょっと訪れただけ(ビジター)だけの関係ですから、ここで自分が解決を目指そうとは考えていないという関係です。この場合には、余計な介入はせず来談をねぎらったりすることが基本的対応となります。第二の関係性はコンプレイナント関係です。コンプレイナント(complainant)とは、コンプレイン(complain)する人という意味です。クライエントは、自分がここで解決を目指そうとはしていないのですが、他人や状況が問題だとカウンセラーに訴えてくる関係です。例えば、学校の対応について不平不満を話す不登校の子どもの母親とカウンセラーの関係性です。この場合には、大変な状況の中で努力をしてきていることをねぎらったりすることが基本的対応となります。第三の関係性は、カスタマー関係です。カスタマー(customer)とは顧客といういみです。クライエントは、自分がここで解決を目指そうとしているという関係です。カウンセラーは、解決志向アプローチの色々な技法を使いつつ解決を構築していくことを目指します。

 

例外

 「例外」とは、すでに生じている解決の一部分です。問題の状況に全ての時間を覆われ尽くされてしまっている人はいません。最悪に思えるときでも、必ず少しは良い状態の時があります。上に書いたように「変化は絶えず生じていて、変化は必然」だからです。つまり、どんな最悪の場合にも「例外」があるのです。

 そして、「例外」の中に、解決へのヒントが隠されています。「例外」を発見し、それについて詳しく考えていくことが、解決への一つの道筋になります。