稲敷市で子どもの自殺予防についての講演をしました。

稲敷市役所の外観

 平成29年8月17日(木)に茨城県稲敷市で「子どもの自殺予防~ おとなたちにできること~」というテーマで講演をさせていただきました。

 稲敷市は、担当の方が精神保健福祉士の資格を持ったかたで、非常に熱心にこの企画を立ち上げてこられたようでした。ちなみに写真は稲敷市役所です。会場の設備も快適で、気持ちよく講演させていただきました。ありがとうございました。

 

 参加者は、小中学校の先生や市役所の関連課の職員の皆さんなど50名ほどでした。以前の学校で一緒に仕事をさせたいただいた先生方もいらっしゃって、講演中にはうなずいて聞いてくださり、あとでも声をかけて下さったり、有り難い気持ちになりました。担当の方が、教育委員会に熱心に働きかけてくださって、各学校から複数の先生方が参加してくださったようです。

 

 講演では、国の動きから、実際の子どもへのかかわり方まで幅広くお話をさせていただきました。最初に、平成29年7月25日に閣議決定された最新の「自殺総合対策大綱」に触れて国の施策の動きを概説しました。

 大綱では当面の重点施策の中に「子ども・若者の自殺対策を更に推進する」ことがとりあげられています。子ども・若者の自殺対策のために、具体的には以下のようなポイントがあげられています。

・いじめを苦にした子どもの自殺の予防

・学生・生徒への支援充実

・SOSの出し方に関する教育の推進

・子どもへの支援の充実

・若者への支援の充実

・若者の特性に応じた支援の充実

・知人等への支援

 

 今回の講演では、特に、自殺の訴えや死にたい気持ちが語られたときに、どんなふうに子どもの話を聴くかということや(危機対応)、普段からどんなふうに話を聴いていくことが大切かについて(予防活動)、具体的に話をさせていただきました。

 大綱では「SOSの出し方に関する教育の推進」として具体的なポイントが上げられているわけですが、実は、これには、大人がきちんと受け止めることが大前提なのです。子どもがSOSを出したのに、きちんと聴けなかったら、子どもをさらに深く傷つけてしまします。だからこそ、丁寧に話を聴き子どもの気持ちを受けとめることをお伝えしてきました。

 

 実は、この10年ほど、文部科学省などが子どもの自殺予防には国を挙げて取り組んできています。研究成果が利用可能な形でまとめられて、インターネットで手に入れることができます。例えば、文部科学省が平成9年にまとめた「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」は具体的にどんなふうに子どもの自殺予防に取り組んだら良いか分かりやすく書かれています。さらにその内容をコンパクトにまとめたリーフレットもあります。「教師が知っておきたい」というタイトルですが、先生に限らず全ての大人に知っておいてほしい内容です。ぜひ一読されることをお勧めします。

 また、子どもへの自殺予防教育の導入についてまとめられている「子供に伝えたい自殺予防(学校における自殺予防教育導入の手引)」も一読の価値があります。子どもに自殺予防教育を行うことについては、自殺というテーマを扱うため、色々な不安や心配を持たれている側面もあります。そういった不安や心配を理解しつつ、共通理解を進めていくことの大切さから、この文部科学省の手引きは書かれています。現実に即していて、かつ丁寧な内容になっていると思います。

 

 子どもにかかわる人にはぜひお勧めしたい資料です。

 

 講演の内容を踏まえつつ、死にたい気持ちを抱えた子どもたちにどんなふうにかかわっていくか、について少し書いておきたいと思います。実際、子どもから「死にたい」などの訴えを聴くことは、稀なことではありません。しかし、そういうことは、非常に言いづらいことですから、言ってくれたことに対して肯定的に応えたいものです。「言いづらいことをきちんと話してくれてありがとう」「勇気がある人なのかなって感じた」などと伝えることが大切です。

 

 「死にたい」というのは、色んな辛いことがあって、色々と考えたり悩んだりした結果のある意味結論とも言える気持ちです。その結論に至るまでの色々な経験や考えを聴いていくことが大切になります。つまり、「死にたい」の理由や背景が大切なのです。

 

 そこを理解しようとすると、「どうして死にたいの?」などということを聴いてみたいように感じることが多いと思います。しかし一般に「どうして」という疑問はお勧めできません。理由の1つは、相手を非難しているニュアンスがあるからです。「死にたい」と感じている子どもをさらに追い詰めてしまうリスクが生じてしまいます。また、「どうして」という質問は、難しい質問で非常に答えにくい質問です。そのため、相手が答えられず、やりとりが行き詰まってしまう可能性があります。こういった理由から「どうして死にたいの?」という投げかけはお勧めできません。

 

 そこで、例えばこんなふうな質問をお勧めします。例えば「どんな時にとくに「死にたい気持ち」が強くなってくるの?」という質問です。死にたい気持ちが強くなる時のことを話してもらうことを通して、死にたい気持ちが生じてしまう理由や背景を少しずつ理解していくことができます。さらに、その話の中でチャンスがあれば、「そんなときにどんなふうに自分を支えてきたの?」「そんな時をどうやって乗り切ってきたの?」などと聴いてみることも一つです。これは、コーピングクエスチョンと呼ばれる聴き方ですが、自分が頑張って自分を支えてきたことに子ども自身が気づくきっかけになることが多いように思います。子どもは子どもなりに頑張っているのですが、なかなか自分の力ではそれには気づきにくいものなので、こんなふうに聴いてみることも大切なことだと思います。