どんな子どもも様々なトラブルを経験しながら成長していきます。子どもが友達や先生に謝罪しなければならないこともよくあることです。しかし、ただ表面だけの謝罪では子どもの成長につながりません。
謝罪は、子どもにとっては、快適でも楽しくもない体験だからこそ、大人が適切にサポートしてあげることで、子どもの学びや成長につながります。
そのためにも、大人がしっかりと謝罪できるように導いてあげることは非常に大切です
子どもの謝り方について考える
まずは、具体例として、友達が傷つくようなことを、つい言ってしまった場合にどのように謝罪するのが良いのかを考えてみたいと思います。
まずは、悪い例です。
さっきはごめんなさい。言い過ぎちゃったけど、そんなに怒らないでね
【なぜ悪いのか】
「言い過ぎちゃったけど、そんなに怒らないでね」という表現は、自分がしたことを「大したことではない」と小さく見せようという態度が表れています。また、相手の「怒り」という感情を勝手にコントロールしようとしていて、相手の傷ついた気持ちに全く寄り添えていません。
次に良い例を見てみましょう。
さっきは、〇〇ちゃんが傷つくようなひどいことを言ってしまって、本当にごめんなさい。あんなこと言われたらすごく嫌な気持ちになるよね。自分の勝手なイライラを○○ちゃんにぶつけてしまいました。それは本当に良くなかったと思っています。これからは、自分のイライラは自分で解決するようにして、それから、言葉に出す前に、相手がどう思うかよく考えてから話すように気をつけるね。
【なぜ良いのか】
「なぜ自分はあんなことを言ってしまったのか」を振り返り、「イライラしていた」と自分自身の行動の根本的な原因を分析できている点は、自分自身の責任にしっかり向き合えています。さらに、そこから「これからは自分のイライラは自分で解決する」という具体的な再発防止策を導き出せているのは非常に良いことです。
大人がどうサポートするか
上に紹介したように、適切に謝罪できるには大人がサポートして子どもと一緒に考えていくことが大切になります。どのようにサポートしたら良いか具体的なポイントを紹介します。
1.すぐに叱るより「振り返り」を促す
「なんでそんなことしたの!」などと、責めることはお勧めできません。しっかりと振り返ることができるように、「何が起きたのか、一緒に考えてみようか」などと働きかけてみることが重要です。
目的は「責めること」ではなく、気づかせることです。
2.「相手の気持ち」に目を向けさせる
「相手はどんな気持ちだったと思う?」と問いかけます。良いか悪いかだけではなく、相手の気持ちに目を向けさせることは重要です。こういった働きかけから人の気持ちに共感できる心が育ってきます。共感する心が育つと、謝罪は「言わされるもの」から自分で考えて行う行動に変わってきます。
もちろん、共感は謝罪する時だけに大切なものではありません。様々な場面で、子どもが他者と良い関係を築くために必要なものです。謝罪が必要な状況で相手の気持ちについて考えることは、謝罪する時にだけ役立つのではなく、それ以外の様々な場面で子どもの力になってきます。
3.謝罪の言葉を一緒に考える
謝罪は、気持ちの問題のようにとらえられがちです。もちろん、気持ちがこもっていることは、とても大切なことです。
一方で、謝罪は社会的なマナーやスキルという側面も大きいです。子どもだけに任せてしまうと、表面的で単純な謝罪になってしまいがちです。それでは、子どもの学びや成長につながりません。大人が必要に応じてサポートすることが重要です。
「どんなことをしてしまったか、どう伝える?」「次はどうするって言えそう?」「相手のイヤな気持ちについては、どんなふうに謝る?」などと、具体的に質問して子どもが適切に謝罪できるようにサポートすることが重要です。
4.「謝れたこと」を評価する
子どもだけではなく大人にとっても、謝罪することはストレスが加わるものです。だからこそ、子どもが実際に謝ることができたときには、その結果だけでなく、「謝ろうとした行動そのもの」をしっかり認めることが大切です。
うまく言えなかったとしても、子どもが謝ろうとしたことについて「ちゃんと謝ろうとしたね」と声をかけることが大切です。こういったサポートを通して、謝ることへの抵抗感がやわらぎ、「謝ることは大切な行動なのだ」という理解につながっていきます。
5.すぐに許されなくても支える
また、謝ったからといって、すぐに相手に許してもらえるとは限りません。
子どもが「謝ったのに許してもらえない」と感じたときには、「相手の気持ちも大事だから、少し時間が必要なこともあるね」と伝え、相手の立場を尊重する姿勢を支えることが重要です。関係を回復するには時間がかかることもある、という現実を経験として学んでいきます。
また、許してもらえなくても謝ることが大切だと学ぶことにもつながります。
6.大人がモデルになる
さらに、最も大きな影響を与えるのは、大人自身のふるまいです。
保護者が子どもに対しても素直に謝る姿を見せることで、「謝ることは特別なことではなく、関係を大切にするための自然な行動である」というメッセージが伝わります。
子どもは言葉だけでなく、大人の姿勢から多くを学びます。
まとめ
このように、謝罪は単なるしつけではなく、人とよりよく関わる力を育てる大切な学びの機会です。
子どもが自分の行動に気づき、相手の気持ちを考え、これからの行動を選べるようになるために、大人が寄り添いながらサポートしていくことが、子どもの成長につながっていきます。
ダウンロード
謝罪について子どもと一緒に考える時に役立つような資料を作成しました。
子どもと一緒に読みながら、一緒に考える材料にしていただければと思います。
また、いじめなどの被害があった場合、加害行為をした児童生徒から謝罪を受ける場面があるかもしれません。表面的な謝罪に終わったり、許さなければならない状況に陥ったりすることがあり、謝罪を受けたことでさらに傷ついてしまったということも起こりえます。
そういったことを防ぐために、謝罪を受けることは急がないことが原則だと思われます。ある程度時間を置くことで、その間に加害行為をした児童生徒が自分の気持ちや行動を振り返って、心から反省できるように大人が指導や支援をすることが必要です。
謝罪を受ける側になった場合には、ここにある資料を活用して加害行為をした児童生徒に指導・支援をしてもらえるように学校や相手方の親に求めることも一つの方法ではないかと思います。
小学校高学年以上向け
小学校低学年向け
謝罪する意味
ダウンロード資料の中に含まれている内容ですが、謝罪する意味について触れておきます。
・信頼関係を回復し、より良い関係を築くため
相手に迷惑をかけたり、嫌な思いをさせてしまったとき、きちんと謝ることで相手の「怒り」や「攻撃したい気持ち」を和らげることができます。謝ることは、相手との信頼関係を回復し、お互いの絆を深めてより良い人間関係を築くためにとても重要です。
・周りから信頼される人になる
「謝ったら自分の負けだ」とか「恥ずかしい」と思うかもしれませんが、それは間違いです。自分の失敗を隠したりごまかしたりせず、素直に認めて謝ることができる人は、「誠実な人」「逃げない人」として、かえって周りから強く信頼されます。先に自分の悪いところを認めて謝れる方が、実はかっこいいことなのです。
・自分を成長させるきっかけになる
だれでも間違ったことをしたり失敗をしたりすることはあります。そのことを反省ししっかりと謝罪することは、正しい行動をとれる人間に成長するきっかけとなります。
謝罪する時に重要なこと
これも、ダウンロード資料の中に含まれていますが、謝罪する時に重要なポイントをまとめておきます。
・言い訳をせず、自分の責任を素直に認める
「だって〇〇だったから」「わざとじゃないから」などと人や状況のせいにせず、まずは自分が悪かった部分を素直に認めましょう。自分がしたことを「大したことではない」と軽く見せようとしないことが第一歩です。自分の言い分がある場合でも、まずは謝ってからあとにしましょう。
・自分がしたことのどこが良くなかったのかを具体的に言う
相手に迷惑をかけたりイヤな思いをさせたりしたことのきっかけや原因になった自分の行動について具体的に伝えます。そして、その行動のどこが良くなかったのかを具体的に言います。
・相手にかけた迷惑や負担を想像して具体的に言って反省を伝える
自分のしたことで相手にどんなふうに困ったことが起きたかを具体的に言葉にします。そして、そのことについて申し訳ない気持ちや反省している気持ちを伝えます。
・相手の気持ちを想像して寄り添う
自分がしたことによって、相手がどれだけ悲しかったか、痛かったか、嫌な思いをしたかを、相手の立場に立って想像してみましょう。そして、相手の気持ちについて、申し訳ない気持ちや反省している気持ちを伝えます。
・二度と同じことを繰り返さない約束をする
ただ謝って終わりにするのではなく、もう二度と同じことをしないことを約束します。そして、二度と繰り返さないためにどのようにするのか、自分がやるべきことを具体的に言葉にします。
・行動で責任をとる
言葉で謝るだけでなく、壊してしまったものを片付けたりするなど、今の状況を少しでも良くするための行動を自分から取ることも大切です。二度と繰り返さないために約束した行動を続けることも大切な責任です。
・「謝ったらすぐに許してもらえる」とは限らない
謝っても、相手の心についた傷や「嫌だった気持ち」がすぐに消えてなくなるわけではありません。謝ったらすぐに仲直りできると期待しすぎず、相手が許してくれる気持ちになるまで待つ姿勢や、その後の行動で示していくことも大切です。相手が許すかどうかは相手の自由です。相手が許してくれるかどうかにかかわらず、自分は自分で正しい行動や約束した行動を続けることが責任ある態度です。
