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公認心理師と臨床心理士 6つの違い

あくまでも予想ですが、公認心理師と臨床心理士の違いについて、今分かっている情報からまとめてみました。

  • 国家資格と民間資格という違い
  • 人の違い
  • 資格の専門性の違い
  • 仕事内容の違い
  • 就職の際の資格要件としての違い
  • 大学(大学院)の違い

ただ、公認心理師の誕生に伴って、心理職の世界は激動が予想されます。10年のことは予想するのは難しいと思います。これから数年間の事についての予想だということをお断りしております。

 

 

国家資格と民間資格という違い

 公認心理師は、「公認心理師法」(平成29年9月15日施行)に基づいて、平成30年に第1回の試験が行われる国家資格です。一方、臨床心理士は「日本臨床心理士資格認定協会」(平成25年から公益財団法人)が認定している民間の資格です。3万人以上の臨床心理士が誕生しています。

 

 

人の違い

 ここ数年間は、臨床心理士の資格を持っている人達の大半は公認心理師の取得を目指すと想像されます。右の図で言えば、公認心理師と臨床心理士の集合を示す円はかなり重なるのではないかと思われます。つまり、少なくとも数年間は、公認心理師と臨床心理士は、人はあまり違わないのではないかと想像されます。

 それ以降は、重なりが少しずつ少なくなっていくのではないかと、思われます。公認心理師の集合を示す円は、最初は小さいのですが、少しずつ大きくなっていくはずです。臨床心理士の集合を示す円は、少しずつ小さくなっていくことが予想されます。それが一定の大きさでとどまるかどうかは、今のところ私には予想できません。

 

資格の専門性の違い

 公認心理師と臨床心理士は、その資格の専門性を深く考えていくと、正反対とも言える違いがあります。公認心理師は、チーム援助や連携を前提とした専門性を目指して作られている資格です。臨床心理士は、個別面接による心理療法を中核として専門性が形成されている資格です。チーム援助や個別面接はどちらも、心理職の活動として必要なものですが、資格がどこに中心を置いて、資格の専門性の範囲ができているのかということについては、正反対なのです。

 このことについては、「臨床心理士と公認心理師」というページで詳しく解説しています。ご参照下さい。

 

 

仕事内容の違い

  仕事として両方の資格を比較すると、少なくとも数年間は、両方の資格の仕事は違いはないと思われます。資格に合わせて社会が仕事を用意するわけではないからです。また、心理職(カウンセラーなど)の仕事はかなり社会に浸透してきていますが、今までは、臨床心理士がその仕事を担ってきました。その仕事がこれからも続けられていくわけです。そのため、仕事内容そのものが公認心理師が誕生したからと言って、がらっと変わってしまう可能性は少ないと思います。

 

 

就職の際の資格要件としての違い

 公立の学校や公立の病院、公的機関などでは、臨床心理士ではなく、公認心理師を採用する方向になっていくと思われます。しかし、ここ数年は公認心理師の資格が誕生してすぐですから、まだまだ公認心理師は少ないと思われます。公認心理師に資格要件を限ると、人を採用できない可能性も生じてきます。そのため、公的な機関での採用についても臨床心理士でも当面は問題ないと思います。しかし、5年ぐらい経過すると、公的な機関での採用には公認心理師が有利になる可能性が高いと思われます。

 また、病院の心理職では、診療報酬に関連して公認心理師の活動に診療報酬が算定されるようになると予想されます。したがって、病院の心理職の資格要件には、公認心理師が必要とされるようになると思われます。厚生労働省の資料に詳しく書かれています。

 

 

 

大学(大学院)の違い

 大学ですが、両方の資格とも大学院が基本です。大学院の違いは少ないと、予想されます(カリキュラムには少し違いがあります)。

 

 臨床心理士の資格取得には、指定大学院(約170校)を修了することが受験資格となっています。これらの大学院が公認心理師に対応したカリキュラムを準備してくるのかどうかが、ポイントとなります。当面の間は、指定大学院が公認心理師のカリキュラムに対応する方向になると思われます。理由は2つです。国立大学の指定大学院は、国家資格である公認心理師に対応することがごく自然な流れになるでしょう。私立大学の指定大学院は、学生確保のために、当面は臨床心理士と公認心理師の両方に対応するようにカリキュラムを構成してくると予想されます。例えば、筑波大学大学院人間総合科学研究科心理専攻のホームページには、「心理専攻では平成30年度入学者から、公認心理師受験資格のためのカリキュラム体制を整えています。」と書かれています。また、聖徳大学大学院臨床心理学研究科では、両方の資格が取れるとホームページに書かれています。それぞれの大学院の情報を十分確認して下さい。

 

  ただし、大学院の経済的・人的な余裕がないところでは準備が間に合わず、公認心理師に対応できないところもあるかもしれません。大学院の受験の時には、十分に確認しておくことが大切です。

 また、数年経過した後は、臨床心理士の指定大学院をやめる大学院が出てくるかもしれません。両方の資格に対応したカリキュラムを整えておくことは相当のコストが掛かるからです。情報収集を密に行って、丁寧に確認していくことが大切だと思われます。