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公認心理師協会と公認心理師の会の定款を比較

 

公認心理師の全国組織として、公認心理師協会と公認心理師の会の2つの会がありますが、この2つの会は会の性格がかなり異なっているようです。

 

定款を比較しながら、会の性格の違いを見ていきたいと思います。2つの会を比較するだけでは分かりにくいので、日本臨床心理士会と日本精神保健福祉士協会を加えた4つの会を比較してみたいと思います。

 

定款とは

定款とは、法人を運営していくルールをまとめたもので、「法人の憲法」と言われるほど大切なものです。

定款は、一般社団法人を設立する際に、その一般社団法人の社員(後で解説します:職員・従業員ではありません)になろうとする2名以上の者が共同して作成したものです。そして、公証人の認証を受けなければ効力は生じません。

つまり、法律に基づいて法人の性格や運営方針を定めている文書で、非常に大切なものなのです。

 

社員とは

一般社団法人の「社員」とは、社会で一般的に使われている「従業員」という意味ではありません。

 

一般社団法人の「社員」とは、社員総会において議案を提出したり、その議決に参加し、議決権を行使する者を指します。株式会社で考えると「株主」に似た立場になのです。

 

社員総会は、一般社団法人の重要事項を決定する最も重要な役割をもっています。「社員」はその会議での議決権を持つわけですから、一般社団法人のオーナー的立場といっても過言ではありません。

 

定款に書かれている「目的」

まず、定款に書かれている目的を見ていきます。

会がどういった目的で活動し運営されているのかが定められていますので、非常に重要な項目です。

 

日本公認心理師協会

この法人は、人々の心の健康に関する諸課題に対応するため、全国の公認心理師の連携を促進し、その英知を結集し、もって人々の健康と福祉の増進に寄与することを目的とする。 

 

公認心理師の会

この法人は公認心理師のスキルアップとキャリアアップを支援することを目的とする。  

 

日本臨床心理士会

本会は、財団法人日本臨床心理士資格認定協会(以下「協会」という。)の認定する臨床心理士(以下「臨床心理士」という。)相互の連携を密にし、臨床心理士の資質と技能の向上を図り、もって人々の心の健康の保持向上に寄与することを目的とする。

 

日本精神保健福祉士協会

本協会は、精神保健福祉士の資質の向上を図るとともに、精神保健福祉士に関する普及啓発等の事業を行い、精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を進めることにより、国民の精神保健福祉の増進に寄与することを目的とする。 

 

目的の違い

公認心理師の会以外の会は、文章の最後に「人々の心の健康の増進に寄与する」などと書かれています。公認心理師の会では、「公認心理師のスキルアップとキャリアアップを支援する」と書かれています。公認心理士以外の一般の人々への健康や福祉への寄与は目的とされていません。

この違いは非常に大きいと考えられます。

 

社員は誰か?

次に、社員がどのように定められているかを見ていきます。つまり、誰が議決権を持つかということです。

 

日本公認心理師協会

定款には、「正会員をもって一般社団法人及び一般財団法人に関する 法律(平成 18 年法律第 48 号)(以下、この定款において「法人法」という。)上の社員とする。」と書かれています。会員の種別がいくつかありますが、公認心理師として登録し入会した人が正会員、つまり社員ということです。正会員全員が議決権を持っています。

 

公認心理師の会

定款には、「この法人の社員は、会員の中から理事に選任された者のうち、理事会において選定され、その就任を承諾した理事長、副理事長及び事務局長をもって、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」とする。)上の社員とする。」と書かれています。分かりにくいのですが、理事長と副理事長と事務局長の3名が社員として定められています。つまり、理事長と副理事長と事務局長の3名だけが議決権を持つのです。

 

日本臨床心理士会

定款には、社員に関する明確な規定はありませんが、「代議員会をもって法人法に規定する社員総会とする。」とか書かれています。つまり、正会員から選挙で選ばれた代議員が社員だと考えられます。なお、正会員は議決権を持っていませんが、社員である代議員と同様に社員総会の議事録などの重要書類の閲覧をする権利を持っていると書かれています。

 

日本精神保健福祉士協会

定款には、「代議員をもって、法人法上の社員とする。」と書かれています。代議員は正会員と準会員から選挙によって選ばれると定められています。なお、正会員は議決権を持っていませんが、社員である代議員と同様に社員総会の議事録などの重要書類の閲覧をする権利を持っていると書かれています。

 

議決権とは会の運営に参加する権利

以上のように比較すると、日本臨床心理士会と日本精神保健福祉士協会は代議員制を採用していて、会員の代表である代議員が社員として議決権を持っているということです。日本公認心理師協会では、正会員が社員であって議決権を持っています。公認心理師の会では、理事長と副理事長と事務局長の3名だけが社員として議決権を持っているということです。

なお、日本臨床心理士会と日本精神保健福祉士協会は会員数が多いため、会員全員を社員とすると社員総会の開催や意志決定が大変になることが予想されます。そのため、代議員制によって運営されていると思われます。

 

つまり、公認心理師の会以外の3つの会では、会員が会の運営に参加できるように制度設計がなされていますが、公認心理師の会では会員が会の運営に参加できる制度は設けられていません。

 

理事の選ばれ方

理事会は会の業務執行に関わる機関です。若干の表現の違いがありますが、どの会でも、理事は社員総会で選任されます。

 

各会によって、社員総会のメンバーが違うところがポイントです。

 

日本公認心理師協会では正会員(つまり社員)による総会(社員総会)によって理事が選任されます。公認心理師の会では、理事長と副理事長と事務局長の3名による社員総会によって理事が選任されます。日本臨床心理士会と日本精神保健福祉士協会では、正会員(と準会員)から選挙によって選ばれた代議員による代議員会(社員総会)によって理事が選任されます。

 

つまり、理事の選任に会員の意思が反映される仕組みを持っていないのは、公認心理師の会だけです。

 

理事長(会長)の選ばれ方

会を代表する存在も定款で定められています。会によって、呼び方は理事長だったり会長だったりします。

 

全ての会で会長・副会長(または理事長・副理事長)は理事会で決定されます。なお、公認心理師の会では、事務局長も理事会で決定されます。

 

まとめ:それぞれの会には性格の違いがあります

以上のことを図にまとめると以下のようになります。

公認心理師協会、公認心理師の会、日本臨床心理士会、日本精神保健福祉士協会の定款を見ていくと、会の目的や会員の位置づけに大きな違いがありました。

 

入会を検討している方は、会の性格の違いをよく理解して入会されることをお勧めします。

 

 

定款へのリンク

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