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公認心理師の職能団体を考える

 

公認心理師の全国組織には、【日本公認心理師協会】と【公認心理師の会】の2つ組織があります。どちらに入会するべきか迷っている方も多いと思います。

 

このブログでは、上記2つの会について、2021年の情報をもとに比較してきました。

もしよろしければ、以下の記事をご参照ください。

【日本公認心理師協会】と【公認心理師の会】を比べてみた

【日本公認心理師協会】と【公認心理師の会】の定款を比較

 

※この記事は2021年12月の情報をもとに書かれています。

 時間経過とともに、各会の特徴や組織が変わってくると思います。最新の情報をもとに判断してください。また、過去の時点での情報も参考になるかと思い、このページを残してあります。

 

  日本公認心理師協会 公認心理師の会
目的 全国の公認心理師の連携を促進し、その英知を結集し、もって人々の健康と福祉の増進に寄与することを目的とする。  公認心理師のスキルアップとキャリアアップを支援することを目的とする。          
会員の位置づけ    議決権を持つ 議決権を持たない
倫理綱領 あり なし ※2022年6月21日制定
上位資格 あり 検討中と思われる
保険制度  賠償責任保険に自動加入  なし
公認心理師協会と公認心理師の会

職能団体とは

そもそも職能団体とは何でしょうか?

Wikipediaを見てみると、以下のように書いてあります。

 職能団体(しょくのうだんたい)とは、法律や医療などの専門的資格を持つ専門職従事者らが、自己の専門性の維持・向上や、専門職としての待遇や利益を保持・改善するための組織である。同時に、研究発表会、講演会、親睦会の開催や、会報、広報誌などの発行を通して、会員同士の交流などの役目も果たす機関でもある。

私が大切だと考えるポイントは、「自己の」という部分です。職能団体とは、専門職が自分たち自身の職能を高めていくことを目指す団体だと言えます。

 

専門性は、自律性や主体性と不可分です。専門職は、誰かの指示や判断によって、活動するのではなく、自分自身の専門性に基づいて判断して意志決定をして活動するのです。

 

だからこそ、職能団体も自分たち自身で自分たちの専門性の維持向上、待遇や利益の保持・改善を図って活動するのだと思います。

 

こういった考えに立つと、会員が議決権を持っている【日本公認心理師協会】は職能団体として捉えられますが、会員が議決権を持っていない【公認心理師の会】は職能団体とは捉えにくいと考えられます。

 

【公認心理師の会】のホームページをよく見ると、「公認心理師の公認心理師による国民のための職能団体をめざします。」と書かれています。現時点では職能団体を目指しているわけですので、今は職能団体ではないと捉えることも間違っているわけではありません。参照:公認心理師の会とは

 

倫理綱領について

【日本公認心理師協会】では、倫理綱領が定められていますが、【公認心理師の会】では、倫理綱領が定められていません。

 

【日本公認心理師協会】は、会員が議決権を持っていて会の運営に関わることができます。つまり、倫理綱領も公認心理師が自分たち自身で倫理綱領を改定しより良くしていくことが出来るのです。【日本公認心理師協会】の倫理綱領は、組織や意思決定の仕組み上、自分たち自身によって定めた自分たちの倫理綱領なのです。だからこそ、倫理を自分自身の専門職としての活動に活かしていくことができるのだと考えられます。

 

一方、【公認心理師の会】には、倫理綱領がありません。また、会員には議決権がなく、理事長と副理事長と事務局長の3人が議決権を持っています。もし、【公認心理師の会】が倫理綱領を定めたとしたら、理事長と副理事長と事務局長の3人が定めた倫理綱領です。こういった倫理綱領が、倫理綱領として意味があるのかどうか、大変疑問です。(2022年6月に倫理綱領が定められました。)

 

対人支援の専門職として活動する公認心理師は、倫理に基づいて活動するべきです。倫理は自分だけが考えるものではありません。多くの人や専門職の中で共通理解が得られている倫理に基づいて活動することが重要です。

 

そういう意味でも、公認心理師は倫理綱領を持っている【日本公認心理師協会】に加入することが良いのではないかと思います。

 

賠償責任保険

自動車を運転する場合には、保険に加入することが求められます。自賠責保険は義務ですが、それに加えて任意保険に加入することが常識です。だれも、事故を起こそうと思って自動車を運転するわけではないのですが、事故に備えておくことが常識なのです。

 

同じように、公認心理師の場合も、活動の中で被支援者の方に何らかの不利益を負わせてしまう可能性に備えておくことが求められます。特に、公認心理師は、専門職としての支援職として活動するわけですので、自分の利益のためだけではなく、常に被支援者の方の利益を大切に活動しています。その点が、自動車運転とは違っています。賠償責任保険は、自分のためだけではなく、被支援者の方の不利益を補うためのものなのです。

 

つまり、公認心理師が賠償責任保険に加入する必要性は、自分のためと被支援者の方のためという二重の必要性があると考えられます。

 

ただし、自分だけで賠償責任保険に加入するのは難しいと思われます。こういった観点からは、【日本公認心理師協会】に入会することの意味は大きいと思います。

 

どちらに入会したら良いか

上記のように【公認心理師の会】は、職能団体としては捉えにくいと考えられます。

 

入会を考えると、会員が会の運営に参加でき、倫理綱領を持ち、賠償責任保険に加入できる団体である【日本公認心理師協会】に加入することが良いのではないかと思います。

 

また、個人的な考えですが、職能団体等の組織への入会についてまとめます。

 

公認心理師資格で心理職として活動する方

都道府県の心理職の職能団体に加入し、日本公認心理師協会に加入することをお勧めします。

 

臨床心理士と公認心理師のダブル資格で心理職として活動する方

倫理綱領が詳細であるという点から、日本臨床心理士会に加入することをお勧めします(賠償責任保険にも入れます)。そして、都道府県の心理職の職能団体に加入することをお勧めします。なお、公認心理師の全国組織は、どちらに加入しても、またどちらにも加入しないでも構わないと思います。

 

なお、都道府県の心理職の職能団体は、○○県臨床心理士会、○○県公認心理師協会などといった、色々な名称で活動しています。「○○県臨床心理士会」という名称であっても、公認心理師が加入できる場合が多いようです。日本臨床心理士会の都道府県の臨床心理士会のページからお探しください。