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「発達障害グレーゾーン」とは?

NHKあさイチ「シリーズ発達障害」

発達障害グレーゾーン

2018年4月16日にNHK「あさイチ」で、『シリーズ発達障害 子どもが「発達障害かも」と言われたら・・・』との放送がありました。「発達障害かもしれない」とか「発達障害のグレーゾーン」と言われた子どもたちやその保護者の方に、色々と苦労が多くなってしまうという様々なエピソードが紹介されていました。

 

 

そもそも「発達障害グレーゾーン」とは何でしょうか? 「あさイチ」のホームページによると、「※番組では『発達障害のグレーゾーン』の定義を、『専門家に発達障害の可能性を指摘されたものの、医師によるはっきりとした診断はついていない状態』としました。」とのことです。

 

こで、上の図を見てほしいのです。右側の方に、発達障害ではない状態があって、左側に「発達障害」があって、その間に「発達障害グレーゾーン」があるというイメージを表現した図です。この図はわかりやすいのですが、大きな誤解につながるように思います。

 

発達障害とは

 

じつは、発達障害と呼ばれる状態も様々な状態を含んでいます。「発達障害者支援法」では、「『発達障害』とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。」と定義されています。ここに出てくる診断名だけでも、5種類の診断名が書かれています。つまり、一口に発達障害と言っても、様々な状態を含んでいます。

 

ところで、自閉スペクトラム症、あるいは自閉症スペクトラム障害(ASD)という概念があります。これは、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」を一つのカテゴリーとしてまとめた概念です。

 

診断名の違いよりも、個々人の違いの方が大きいため、診断カテゴリーにこだわるよりも全体として広く捉える方が意味があるという考え方が背景にあります。このASDという概念が提案され、広く受け入れられるようになりました。ASDとは、Autistic Spectrum Disorders の略です。注目すべきは、まず、「 Disorders 」と複数形になっていることです。色々な「disorder」を含んでいるということです。また、「spectrum」という単語にも注目する必要があります。「spectrum」とは、虹のことです。様々な状態(色)を含んでいるけれども、それらはつながっている(連続している)ということを表現した言葉です。

 

 

つまり、発達障害と言われている状態は、様々な状態を含んでいるということが極めて重要なことなのです。

 

ここで、上に描いた図があまりにも単純であることがわかっていただけると思います。白から黒への変化の中間が「発達障害グレーゾーン」ではないのです。白から虹色(spectrum)への変化の中間が「発達障害グレーゾーン」なのです。

 

発達障害は個性か障害か

よく、発達障害は個性か障害かという質問があります。東京学芸大学名誉教授の上野一彦先生は、「障害とは理解と支援を必要としている個性である」と主張しています。障害か個性かという疑問は、この言葉につきるような気がします。

 

また、発達障害の一つであるASDの医学的診断基準の中には、ASDにつながる症状が生活や職業の活動の中で困難(障害)が引き起こされているという基準が含まれています。同じ状態(症状)の人がいたとして、それによって、色々な苦労や困難が生じている場合には、ASDという障害と診断されるのですが、色々な苦労や困難が生じていない場合は、ASDという障害と診断されないのです。

 

同じ個性を持っている場合でも、その個性によって大きな苦労や困難が引き起こされている場合は、発達障害であり、その個性を上手く活かしたり対処したりして苦労や困難があまり大きくない場合には、発達障害ではないのです。

 

要するに、発達障害というのは、上野先生の言葉のように「理解と支援を必要としている個性」なのです。

 

発達障害パステルゾーンという表現も

実は、このブログを書きながら、「だから、グレーじゃないんだよなぁ・・・」と考えて、「虹色と白の中間って何だ?」とボンヤリ考えていました。一晩寝て朝起きて、「パステルカラーだよね」と思いつき、「じゃあ、『発達障害パステルゾーン』ってどうなんだろう」と考えがひろがりました。そこで、検索してみると既に、この言い方が使われていて、肯定的なイメージがあるため、その言葉を使っていこうという考え方もあるようです。ちょっと、勉強不足でした。

 

 

パステルゾーン

 

いずれにしても、「発達障害」と診断のつく子どもたちも、ひとり一人が違った存在で、個性や特徴も様々です。「発達障害グレーゾーン」や「発達障害パステルゾーン」と呼ばれる子どもたちは、さらにもっと、個性や特徴が様々になってくるはずです。

 

 

「グレーゾーン」「パステルゾーン」とひとまとめに考えるのではなく、ひとり一人の個性や特徴、今の状態を丁寧に理解することが全てのスタートになると思います。

 

「発達障害グレーゾーン」とされる子どもたちには支援が届きにくい現状があります。療育機関や特別支援学級は診断がある子どもたちへの対応で手いっぱいです。医療機関でも、診断がない子どもたちには治療や投薬は難しいようです。民間のカウンセリングルームの方が、保護者のニーズに応えられる場合が多いと思います。

 

リソースポートは、「発達障害グレーゾーン」「発達障害パステルゾーン」と呼ばれているお子様や、その保護者様のそれぞれのご要望やニーズに合わせてサービスを提供できます。以下のページをご参照ください。

発達障害かもしれないと心配な保護者様とのカウンセリング

 

また、合理的配慮に基づいて学校へ要望を行う場合の注意事項やコツを解説した記事も書きました。以下のページをご参照ください。

学校へ要望を伝えるコツ(合理的配慮の求め方)