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『消えたい』『死にたい』子どもの声の受け止め方

 

お子様から、「消えたい」「死にたい」などという声を聴いた時には、ほとんどの大人はショックを受けてしまうのではないかと思います。しかし、多くの子どもたちが、「消えたい」「死にたい」という気持ちを抱えて生活しています。子どもたちの声を受け止め、心をサポートする方法について解説します。

 2021年5月6日 更新

悩んでいる中学生

子どもの自殺が増えています

 

子どもたちの自殺が増えています。深刻な事態だと思います。まずは、文部科学省が報告した結果を紹介します。

 

小中高校生の自殺者数の推移

子どもの自殺数の推移

コロナ禍における児童生徒の自殺等に関する現状について(文部科学省2021年2月15日) 

平成28(2016)年は、289名 (青い実線)

平成29(2017)年は、315名 (赤茶色の点線)

平成30(2018)年は、333名 (黄緑の点線)

令和元(2019)年は、339名 (紫の点線)

令和2(2020)年は、479名 (赤い実線)

 

子どもの自殺は増え続けています。そもそも、子どもの数自体は少しずつ減っているにもかかわらず、自殺まで追い込まれてしまう子どもたちが増えているのです。これは、非常に深刻な事態です。

 

しかも、昨年2020年は、前年度から41.3%も多くなってしまいました。

この1年は、コロナ禍の中で社会が大きな不安に直面した1年でした。子どもたちは、2020年3月からの一斉休校にともなって学校に通うこともできずに自宅で長時間過ごすことになりました。友達とのつながりや先生とのつながりがうまくできずに、苦しんだ子どもたちも多かったのだと思います。

 

子どもたちの苦しさが、こういった数字に表れてきていると思います。

 

「消えたい」「死にたい」をどう理解するか

カウンセラーとして仕事をしていると、子どもたちから「消えたい」「死にたい」という訴えを聞くこともよくあります。残念ながら珍しい話ではなく、私がカウンセリング場面で出会う子どもたちの数割からそういった話を聞くことができます。小学校の低学年の子どもたちから「死にたい」「消えたい」という話を聴くこともよくあります。

 

ところで、大人の自殺の場合、合理的に判断し覚悟して自殺するわけではないようです。自殺が、様々な重荷や負担から解放される出口として感じられてしまい、追い詰められた結果として自殺にいたるようです。

 

子どもの場合は、その傾向がより顕著だと感じます。「死にたい」「消えたい」と話す子どもたちの話を聴いた実感では、そう話す子どもたちは、様々なストレスや困難に直面していて、苦しさや辛さを抱えています。子どもは大人よりも、自分の力でできることが限られていて、そこから抜け出すことがなかなか難しいことが多いと感じます。子どもたちは、そういった状況から抜け出したい、楽になりたい、解放されたいと思っていて、それが「消えたい」「死にたい」という訴えになっていると感じます。だから、現実的に実際に死んでしまいたいということとして、「消えたい」「死にたい」という訴えているわけではない場合がほとんどです。

 

だからといって、安心してしまうと、子どもがさらに深く傷ついてしまうことにつながります。そうなると、自殺が現実的な問題として大きくなってしまいます。子どもの置かれている大変さを理解し、子どもの辛い気持ちや苦しい気持ちを丁寧に理解することが大切です。

 

SOSの出し方教育が進められています

こんなふうに、子どもたちの自殺が高止まりしている状況を解決していくために、「SOSの出し方教育」が進められています。

 

「SOSの出し方に教育」というのは、子どもたちが、非常に辛い状況に陥ってしまったときに、身近にいる信頼できる大人にSOSを出すことができるようにするための教育活動です。SOSの出し方教育では、「辛い時に、少なくとも3人の大人に相談しよう」と子どもたちに働きかけています。

 

 子どもたちが自分から相談できるようになることは、非常に良いことだと思います。しかし、SOSを出すように求めるのであれば、それよりも前に、まずは大人が子どものSOSを受け止められるようになることが大切だと思います。

 

 そこで、このブログでは、「死にたい」「消えたい」と子どもたちから聞いたときにどんなふうに受け止めたら良いのかについて解説したいと思います。

 

『死にたい』『消えたい』と言われたときの対応

 

「死にたい」「消えたい」ということを聞いたときに、どんなふうに言葉をかけていったら良いか、話の流れにそって、具体的に解説していきたいと思います。

 

話してくれたことに感謝

 

まずは、「死にたい」「消えたい」という気持ちを話してくれたことに感謝を伝えることが大切です。そういった思いはなかなか人に言えないものです。こちらを信頼してくれたからこそ、話してくれたのです。だからこそ、まずは、「話してくれてありがとう」などと感謝を伝えることがスタートです。

 

落ち込んでいる子ども

辛さや苦しさに共感

その次には、「死にたい」「消えたい」という辛さや苦しさをよく聴いて共感を伝えることが大切です。【気持ちに共感する】ことが大切ということは、ほとんどの人が知っていると思います。しかし、「死にたい」と言われたときに共感しようとして「死にたいね」などと言葉を返すことには抵抗感を感じる人がほとんどだと思います。まずは、「死にたい」「消えたい」と思う背景にある、色々な辛い状況や苦しい状況を理解することが大切だと思います。

 

「死にたい」「消えたい」背景を理解しようとすると、「どうして死にたいの?」などと質問をしたくなるかもしれません。この質問はあまりお勧めできません。「なぜ」「どうして」という質問には、相手を非難している雰囲気があります。子どもたちの心に負担をかけてしまう危険性があります。

 

辛さや苦しさに共感するためには、「どんなときに?」と質問してみることをお勧めします。「特にどんな時に、死にたい気持ちが強くなるの?」「消えたいって思うのはどんな時?」などと聴いてみるのです。「寝るときに明日目が覚めたら学校だなって思うとき」などと、子どもたち自身が、辛い気持ちや苦しい気持ちに直面しているリアルな場面が分かるかもしれません。こんなふうに具体的に分かると、「学校に行かなきゃって思うときに、本当に辛くなるんだね」などと言葉を返して子どもの気持ちに共感を伝えることができると思います。

 

こちらにできることがあるかどうかを聴く

 

気持ちに共感してもらえる体験は、子どもたちにとってサポートになると思います。それだけでも、子どもたちは少しずつ良い方向に向かっていけるかもしれません。もし、可能であれば、より具体的・現実的にサポートできることがあるかどうかを聴いてみることもお勧めです。

 

「私に何かしてほしいことはある?」「手助けしてほしいこととか何か思いつく?」などと聴いてみることも一つの方法です。もし、常識的に考えて実行可能な要望が出てきたら、ぜひ応えたいところです。

 

明確な要望がでてこなかったとしても、それでも意味があります。【助けようとしてくれている人がいる】【手助けが得られるかもしれない】という気持ちが子どもの心に生じてくることが期待できます。

 

要望が出なかった場合には、「何か思いついたら後でも良いから教えてね」と投げかけておけば、後で聞きやすくなります。また、辛いこと苦しいことを考えるのではなく、どう助けてもらうかを考えることにもつながりますので、少しは辛さが軽減するかもしれません。

 

また話をすることを具体的に約束

 

一度に長時間話して、説得するようなことはあまり意味がありません。それよりも、少しずつ何度も長期にわたって関わり続けることが子どものサポートになります。

 

また近いうちに話すことを約束することがお勧めです。具体的な日時を決めて、話すことを約束することができれば、危機的な状況に陥ったときにも思い出してくれるかもしれません。

 

最後に、思いついたこと付け足したいことを聞く

 

色々と話をして、次回の約束をした後に、言い足りないことがないかを確認することをお勧めします。

 

例えば、「そういえば、あれも言っておかなくちゃとか、付け足したいこととか何かありますか? 急に思いついたことで関係ないけど言っておこうかなということでも良いですよ」などと促します。

 

経験上、意外と重要なことが語られることがあります。重要な内容であれば、次回に詳しく聞かせてほしいと伝えて、終わることも良いと思います。「それは大切な話だから、きちんと聞かせてほしいから、また次に話すときに聞かせてほしいと思うんだけど、それで良いですか?」などと伝えて終わります。

 

叱ってはいけない

 

ありがちな対応ですが、「死にたい」と子どもが言ったときに、「そんなこと言ってはいけない」「何をバカなことを言ってるの!!」などと叱ることがあるかもしれません。また、「死ぬことは良くない」「死んでも何も解決しない」などと、倫理的または論理的に自殺を否定することもあるかもしれません。

 

これらは、子どもを大切に思って言っていることなのですが、子どもは自分自身を否定されたように感じてしまう可能性が高いと考えられます。そのため、これらの言葉は、死につながる気持ちや行動を助長させてしまいます。叱ったりせずに、気持ちを受け止めることが原則です。

 

アドバイスはしない

 

また、子どもの直面している問題を少しでも軽くしてあげようと考えて、色々とアドバイスをすることも多いかもしれません。例えば、友達との関係で苦しんでいて「死にたい」と感じてしまっている子どもに対して、友達関係の改善方法について、「自分から話しかけてみた方が良いよ」「別の友達から言ってもらったら」などとアドバイスするかもしれません。

 

こういった働きかけは、死につながる気持ちや行動を助長してしまうリスクがあります。

 

アドバイスというのは、アドバイスを受けた人が実行しなくてはなりません。実行できなかった場合や実行しても上手くいかなかった場合に、自分自身を責める気持ちが生じがちです。また、アドバイスされる側に何か足りないところ良くないところがあるからこそ、アドバイスを受けるのです。つまり、どんなに善意でアドバイスをしても、子どもにダメ出しをしている(子どもを否定している)側面がつきまといます。アドバイスをされる毎に、子どもはさらに傷ついている可能性があります。

 

だからこそ、アドバイスせずに、気持ちを受け止め、できることがあるかどうか聞くことが大切なのです。

 

気休めを言わない

 

また、少しでも気持ちを楽にしてあげようと思って、「大丈夫だよ」「なんとかなるよ」などと声をかけることもあるかもしれません。年齢が高くなってくると、こういった言葉かけは、ただの気休めに過ぎないと感じることが多くなります。子どもは「真剣に聞いてくれていない」「適当に流された」と感じてしまう可能性があります。子どもの気持ちに共感することが基本だと思います。

 

一番大切なこと

 

「消えたい」「死にたい」と訴える子どもをサポートする場合に、一番大切なことは、しっかりとかみ合ったやり取りが生じることで。「死なないでほしい」と大人から(親から)言われるから、死なないのではないのです。かみ合ったやり取りが生じるからこそ、生きている実感や生きている意味が感じられ、生きていくことができるのです。

 

だからこそ、「死ぬな」「死なないでほしい」と伝えるよりは、「あなたが死んでしまったことを想像すると、私は本当に怖くなる」「あなたが死んでしまうと考えると、(私は)苦しい」と自分自身を伝えることが大切です。

 

「死ぬな」「死なないでほしい」と伝えることは、命令やお願いでしかありません。一種のアドバイスであり、子どもをコントロールしようとしているということです。「死にたい」「消えたい」と苦しんで話をしてくれた子どもを否定することでもあります。「あなたか死んでしまったことを想像すると、私は怖くなる」と伝えることは、向き合っている大人自身を伝えることです。子どもが死にたくなっていることも否定していませんし、自分(大人)が子どもに死なないでほしいと思っていることも否定していません。死にたくなる気持ちまで含めて、子どもを認め受け止めるからこそ、子どもが生きていくことができるのです。

 

まとめ

子どもたちの自殺が高止まり傾向です。子どもの自殺を防ぐために、SOSの出し方教育も行われていますが、まずは大人が子どものSOSの受け止められるようになることが大切だと思います。

 

SOSを受け止めるためには、

  • 叱ったりアドバイスをしたりしない
  • 話してくれたことに感謝する
  • 辛い気持ちや苦しい気持ちに共感する
  • こちらにできることがあるかどうかを聞く
  • また話をすることを具体的に約束する
  • 「死なないでほしい」ではなく、「あなたが死んでしまうことを想像するだけで、私は苦しい」などと自分自身を伝える

といった関わりかたが大切です。