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「ひきこもりシステム」と回復

少し古い本ですが、『社会的ひきこもり-終わらない思春期』(PHP新書 著:斎藤環)という本があります。その100ページから、「ひきこもりシステム」についての解説が書かれています。そして、129ページから「治療の全体的な流れ」として「ひきこもりシステムの変化」について解説されています。

 

それをもとに、ひきこもりからの回復プロセスについて解説します。


ひきこもりシステムとは

ひきこもりシステム

上の3つの円は、【社会のシステム】と【家族のシステム】と【個人のシステム】を表しています。

 

3つの円が、離れて位置していて接点を持たない状態です。お互いに、影響を与え合うことができていない状態にあります。この状態が、ひきこもりが維持されてしまう、「ひきこもりシステム」の状態です。

 

ところで、「システム」という言葉の解説が必要かもしれません。例えば、家族は、家族に所属している1人1人(とペット)から構成されていて、それぞれが関わりあいお互いに影響を与えてあっていて、ある程度まとまりを持っています。そんなふうに、要素(家族の場合1人1人)から構成されていて、それぞれの間に相互作用が生じていて、全体としてまとまっているつながりあいをシステムと呼びます。社会も、さまざまな個人や組織、団体などの要素から構成されていて、それぞれの間には相互作用が生じていて、全体としてまとまっているつながりあいの状態にあります。そのため、社会もシステムと捉えることができます。一人の人間(個人)も、体の各組織や各器官から構成され、心も記憶や感情、思考、認知などの機能があります。それらが、相互作用を持ち全体としてまとまりている状態にあります。つまり、個人もシステムなのです。そのように考えていくと「社会のシステム」というのは、「社会というシステム」という意味です。

 

『社会的ひきこもり』では、「接点」について、単なる会話があれば接点があるということではないとのことが述べられています。会話があるということではなく、相互性のあるコミュニケーションが重要だと述べられています。残念ながら『社会的ひきこもり』では、それ以上の解説はないのですが、相互性のあるコミュニケーションについて、私なりに解説します。

 

 

ひきこもりからの回復につながる「接点」とは

 

 『社会的ひきこもり』で言われている「接点」とは特別な意味合いを持っている言葉です。「相互性のあるコミュニケーション」であるとの若干の解説があります。

 相互性があるというのは、お互いに影響を与え合っているということだと考えられます。つまり、相互性があるということは、相手を変える・相手が変わるということではなく、「自分が変わる」ということです。相手の話を聞き流したり、受け流したり、ただ話を合わせているだけでは、本当の意味では相互性があるとは言えません。相手の話をしっかりと聴くことができると、自分自身の中で変化が生じます。考え方が変わったり、気持ちが変わったりするのです。そういう意味で、相互性があるコミュニケーションが「接点」なのです。

 

通常の社会・家族・個人のシステム

ひきこもりシステムからの回復(健常なシステム)

【社会のシステム】と【家族のシステム】と【個人のシステム】の3つのシステムが、相互に接点を持っている状態です。ひきこもりの状態ではなく、適切に関わりあえている状態です。

 

 

ひきこもりからの回復プロセス

1.ひきこもりの状態

ひきこもりシステム

【社会のシステム】と【家族のシステム】と【個人のシステム】の3つのシステムが、相互に「接点」を持たず、関わりあえず、影響を与え合えない状態です。

 家族の中に、ひきこもりの人がいると、家族全体も社会とのかかわりが少なくなって、家族全体が社会からひきこもってしまうことが良くあります。そこまでいかなくても、家族が社会とは表面的なかかわりあいや必要最小限のかかわりになってしまうことは非常に多いと思います。

 

2.家族がまず社会と接点を持つ

ひきこもりシステムからの回復のプロセス1

 ひきこもりからの回復を考えていくと、家族がまず支援を受けるようになることが第一歩となることが多いと思います。

 家族が支援を受けながら、ひきこもり状態にある個人の回復を目指しましていきます。ここで大切なことは、ひきこもり状態にある人に社会システムとの接点を持たせようとすぐにしないことです。

 

 

3.家族とひきこもりの本人が接点を持つ

ひきこもりシステムからの回復プロセス2

 家庭の中でひきこもり状態にある個人が、まずは家族との接点を回復している状態です。挨拶をしたりというようなごく簡単なことから始めて、しっかりと接点が保たれるように工夫していきます。家族が、支援を受け続けて、接点を保ちつつ、ひきこもり状態にある人に良い影響が与えられるように関わり方を工夫していくことが重要です。

 

4.ひきこもりから回復したシステム

ひきこもりシステムからの回復(健常なシステム)

家族との接点を通して、ひきこもり状態にある人にも変化が生じてきて、社会との接点が持てるようになった状態です。

 

 シンプルな捉え方ですが、本質的で大切な視点だと思います。

 

 子育てカウンセリング・リソースポートはお子様の成長や心の安定のためには、お子様が支援を受けることよりも、保護者様がまず支援を受けることを原則と考えております。この考え方は、ひきこもりの支援においても、共通しているのです。

 

 

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