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スクールカウンセラーの歴史

公開:2021年3月21日

更新:2023年2月9日

 

 学校にスクールカウンセラーがいることが、ごく普通になってきたように思います。最初は、1995年(平成7年)に各県3校だけでスタートしました。下のグラフや図のように、20年以上かかって少しずつ配置校数が増えてきました。

 

 スクールカウンセラーの歴史を振り返ってみたいと思います。

 

スクールカウンセラー配置校数の推移
スクールカウンセラー配置校数の推移

目次

学校の教室

 

1.スクールカウンセラー活用調査研究の時代

 

1995年

スクールカウンセラーは、不登校などの児童生徒の問題行動等への対応として1995年から「スクールカウンセラー活用調査研究」委託事業として開始されました。1995年度(初年度)には各県に3校程度の配置で、全国では154校への配置でした。

 

調査研究という位置づけでしたので、2年間でスクールカウンセラーの活用について実践的な研究を行うというものでした。2年が経過すると、その学校ではスクールカウンセラーは配置されなくなりました。

 

次の年以降も「スクールカウンセラー活用調査研究」委託事業は続けられ、配置校の数は、各県10校程度に増えていきました。しかし、2年の調査研究期間が過ぎればその学校からはスクールカウンセラーはいなくなってしまうという状況が続きました。

 

1998年

1998年の中央教育審議会答申では、「すべての子どもがスクールカウンセラーに相談できる機会を設けていくことが望ましい」と述べられました。それを受けてそれ以降も配置は増加していきました。

 

2000年

2000年度(6年目)には初年度の14.6倍の2250校に配置されました。

 

 

2.スクールカウンセラー活用事業の時代

 

2001年

2001年度からは国による補助事業という位置づけで「スクールカウンセラー等活用事業」として中学校を中心として全国で4406校に配置されました。また、調査研究委託事業ではなくなったため、2年間の縛りはなくなりました。

 

2007年

2007年度には、公立中学校全校分に相当する約1万校の配置が可能となるよう予算が措置されました。なお、中学校に配置するための予算を、小学校や高等学校へ配置するスクールカウンセラーに振り向ける場合が、都道府県によってはありました。そのため、全国の全ての公立中学校にスクールカウンセラーが配置されたわけではありません。

 

2008年

2008年の教育振興基本計画(文部科学省)では、「いじめ,暴力行為,不登校,少年非行,自殺等に対する取組の推進」として、「教育相談を必要とするすべての小・中学生が適切な教育相談等を受けることができるよう,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の活用など教育相談体制の整備を支援する」と述べられています。

 

2014年

2014年には、スクールカウンセラーは、小学校では58.7%、中学校では91.8%、高等学校では78.8%の学校に配置されています(平成26年度学校保健調査)。なお、週に4時間以上となる配置は、小学校では14.2%、中学校では62.8%、高等学校では32.3%でした。

 

この頃になると、都道府県によって、スクールカウンセラーを配置する方法がさまざまにってきています。学校での勤務時間も4時間や6時間、7時間、8時間などさまざまです。また、勤務回数も、年に数回程度の巡回から毎週の勤務までさまざまです。

  

特筆すべき事は名古屋市のスクールカウンセラー制度です。名古屋市では、「なごや子ども応援委員会」職員として、常勤のスクールカウンセラーを11のブロック毎に配置する独自の事業が開始されました。少しずつ常勤のスクールカウンセラーの配置校を増やしていく計画ということです。

 

3.チーム学校の時代

 

2015年

2015年には中央教育審議会による「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」が提出され、「チームとしての学校」、いわゆる「チーム学校」の重要性が指摘されました。

 

その中では、いじめ・不登校などの生徒指導上の課題や特別支援教育の充実、貧困問題への対応など、学校の抱える課題の複雑化・多様化、学校に求められる役割の拡大に伴い、心理や福祉等の専門性が求められています。

 

心理職であるスクールカウンセラーも「チーム学校」の一員として学校の中で機能することが求められるようになりました。

 

なお、答申の中では、「スクールカウンセラーを学校等において必要とされる標準的な職として、職務内容等を法令上、明確化することを検討する。」とスクールカウンセラーの位置づけを明確にするよう方向性が示されています。

 

平成28年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」では、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーについて、配置時間の充実など、学校における専門職としてふさわしい配置条件の実現をうたっています。そして、その指標として、不登校の小中学生のうち、学校内外で相談等を受けた者の割合を希望するすべての者が受けたと考えられる水準として80%を掲げています。

 

2017年

1月に出された「児童生徒の教育相談の充実について(報告)」では、スクールカウンセラーの職務内容が示されています。また、「SCガイドライン(私案)」が提案されています。SCのスーパーバイザーの必要性についても言及されています。

 

2017年4月1日の学校教育法施行規則の改正で第65条にスクールカウンセラーは「心理に関する支援に従事する」として職務が規定されました。今まで、スクールカウンセラーの存在は法令の中には規定されていませんでいたので、これは大きな変化です。

 

2018年

2018(平成30)年4月1日にスクールカウンセラー活用事業の実施要領が改正され、公認心理師についての規定が加えられています。それまでは、スクールカウンセラーの選考に関して、第1番目に臨床心理士が挙げられていましたが、第1番目には、公認心理師が加えられました。なお、臨床心理士は2番目に書かれています。

 

この年の9月に第1回公認心理師試験が実施されました。

 

2019年

2019年の2月に公認心理師登録証の発送が開始されました。公認心理師が誕生しました。

 

2019年には、スクールカウンセラーは、小学校では84.7%、中学校では97.6%、高等学校では91.3%の学校に配置されています(令和元年学校保健調査)。なお、週に4時間以上となる配置は、小学校では22.7%、中学校では66.7%、高等学校では43.8%でした。

 

名古屋市の「なごや子ども応援委員会」職員である常勤のスクールカウンセラーは、名古屋市内全ての中学校110校に常勤で配置されました。

https://kyoiku.sho.jp/51555/

 

 

2022年

2022年の3月7日に国会で、スクールカウンセラーの勤務日数について話題になりました。

 

野党の議員から「月曜日から金曜日までずっと相談室にカウンセラーいらっしゃって、子どもたちが自由に相談に行けるのが理想だと思うんですね。一足飛びに全校配置はならないかもしれない。しかし、1週間の5日のうち2日ぐらいはいてほしいと思うんですね。今、スクールカウンセラーが1校あたり、どれぐらいいるか。」と質問がありました。

 

文科大臣は「実情は27500校ぐらいは、スクールカウンセラーさん、週1回、4時間程度となるんですけども、掛け持ちが多いというのは実情を聞いてございます。」

また、岸田総理大臣は「スクールカウンセラーの現状、どこまで拡充できるのかはしっかりと検討し、具体的に人数とか数字において結果を出せるように文部科学大臣と共に検討したい。」

との答弁だったとのことです。

 

2022年12月に「生徒指導提要」が改訂され公開されました。

 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1404008_00001.htm

 

スクールカウンセラーは70を超える回数で記述され、チーム学校の一員としての活動が期待されています。

  

【一例】 第3章「チーム学校による生徒指導体制」(P87~88)

さらに、教育相談活動はチームで行う活動であり、その構成員にはそれぞれ求められる役割があります。例えば、心理面に関する教育プログラムの開発は生徒指導主事と教育相談コーディネーターがSCの協力を得ながら行い、学級・ホームルーム担任が実施の中心になります。不登校児童生徒への面接はSCが実施し、スケジュール調整は教育相談コーディネーターが行い、学級・ホームルーム担任は、児童生徒との信頼関係の構築や学級づくりを進めます。発達障害が背景にあれば、特別支援教育コーディネーターが担任等と協働して「個別の指導計画」を立て、きめ細かな支援を行います。虐待の可能性があれば、学級・ホームルーム担任や養護教諭等の教職員とSSW等が家庭や関係機関等と連携を取るなどの対応をします。このように、一つのケースや取組であっても、それぞれの立場から協力して教育相談を推進することが重要です。

 

2023年

2023年2月に萩生田光一元文部科学大臣が国会の答弁で、スクールカウンセラーについて言及しています。

 

それが、以下のような内容で、ツイッターではかなり物議を醸しました。

「スクールカウンセラーはスクールカウンセラーという資格があると思う人もいると思うんですが、そうじゃないんですよね。実は、たまたま学校に来て頂いている、こういった心理の専門家の方をスクールカウンセラーと呼んでるので、別の国家資格なんです。」

 

 

この記事は、半田一郎(公認心理師、臨床心理士、学校心理士スーパーバイザー)が作成しました。

 

 

 

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