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いじめの重大事態とは

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リソースポートには、いじめの被害を受けた子どもたちについての相談も寄せられています。

 

そのほとんどが、大きな被害を受けた事案です。いじめの重大事態として適切に対応されていなくてはならないのですが、きちんとした対応や支援を受けていないことがほとんどです。

 

そこで、この記事ではいじめの重大事態についてまとめてみました。

 

なお、学校や教育委員会が適切に対応した事例は、私たちの所まで相談に来ないと思われます。リソースポートにいじめの相談があるからと言って、多くの学校が適切に対応していないという事ではありません。

 

 

教室で悩んでいる女子中学生

いじめ重大事態とは(法律の定義)

いじめ問題を考えるときに、一番重要なことは、「いじめ防止対策推進法」に書かれている内容です。その次に重要なことは、文部科学大臣の決定による「いじめ防止等のための基本的な方針」の内容です。さらにその次には、各都道府県のいじめ防止についての条例、各種ガイドライン、各学校のいじめ防止基本方針が重要となります。

 

そこで、まず、「いじめ防止対策推進法」に重大事態がどのように書かれているか見ていきます。「いじめ防止対策推進法」の第二十八条にいじめ重大事態の定義が書かれています。

 

いじめ重大事態とは以下の二種類があてはまります。

  1.  いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
  2.  いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。

この文面には、「疑いがあると認めるとき」と書かれていますが、これは、非常に大きな意味を持ちます。つまり、「心身または財産に重大な被害が生じた」時に重大事態に当てはまるのではなく、その「心身または財産に重大な被害が生じた可能性がある」時に重大事態だと判断されるのです。

 

実際問題としては、学校や教育委員会は、疑いがあるという段階(つまり、可能性があるという段階)では、なかなか具体的に動こうとしてくれない場合が多いと思います。しかし、法律には明確に書かれているので、しっかりとこの点を押えておくことが大切です。疑いがあるという段階でも、重大事態と見なして動くことが求められていることを理解しておいてください。

 

「いじめの防止等のための基本的な方針」では

 

次に、「いじめ防止等のための基本的な方針」(文部科学大臣決定(最終改定 平成29年3月14日))を見ていきます。ここには重大事態について、より詳しい解説が書かれています(p32)。以下、抜粋します。

 

① 重大事態の意味について

 「いじめにより」とは,各号に規定する児童生徒の状況に至る要因が当

該児童生徒に対して行われるいじめにあることを意味する。

また,法第1号の「生命,心身又は財産に重大な被害」については,い

じめを受ける児童生徒の状況に着目して判断する。例えば,

○ 児童生徒が自殺を企図した場合

○ 身体に重大な傷害を負った場合

○ 金品等に重大な被害を被った場合

○ 精神性の疾患を発症した場合

などのケースが想定される。

 法第2号の「相当の期間」については,不登校の定義を踏まえ,年間

30日を目安とする。ただし,児童生徒が一定期間,連続して欠席してい

るような場合には,上記目安にかかわらず,学校の設置者又は学校の判断

により,迅速に調査に着手することが必要である。

 また,児童生徒や保護者から,いじめにより重大な被害が生じたという

申立てがあったときは,その時点で学校が「いじめの結果ではない」ある

いは「重大事態とはいえない」と考えたとしても,重大事態が発生したも

のとして報告・調査等に当たる。児童生徒又は保護者からの申立ては,

学校が把握していない極めて重要な情報である可能性があることから,調

査をしないまま,いじめの重大事態ではないと断言できないことに留意す

る。

 

なお、自殺企図というのは、自殺をしようとして何らかの行動を起こした場合です。

 

ここでのポイントは、「相当の期間欠席を余儀なくされている」という文言の中にある「相当の期間」が30日を目安とするということです。しかも、この目安にかかわらず早めに調査に着手することが大切だと書かれています。

 

また、保護者が重大事態だと考える場合には、学校や教育委員会が重大事態だと捉えていない場合であっても、重大事態だと捉えて動くことが必要だということです。

 

「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」では

いじめの重大事態の調査に関するガイドラインでは、重大事態の具体例が挙げられています(末尾にある別紙)。以下に、引用いたします。

 

いじめ(いじめの疑いを含む。)により、以下の状態になったとして、これまで各教育委 員会等で重大事態と扱った事例

◎下記は例示であり、これらを下回る程度の被害であっても、総合的に判断し重大事態 と捉える場合があることに留意する。

 

①児童生徒が自殺を企図した場合

○軽傷で済んだものの、自殺を企図した。

②心身に重大な被害を負った場合

○リストカットなどの自傷行為を行った。

○暴行を受け、骨折した。

○投げ飛ばされ脳震盪となった。

○殴られて歯が折れた。

○カッターで刺されそうになったが、咄嗟にバッグを盾にしたため刺されなかった。

○心的外傷後ストレス障害と診断された。

○嘔吐や腹痛などの心因性の身体反応が続く。

○多くの生徒の前でズボンと下着を脱がされ裸にされた。

○わいせつな画像や顔写真を加工した画像をインターネット上で拡散された。

③金品等に重大な被害を被った場合

○複数の生徒から金銭を強要され、総額1万円を渡した。

○スマートフォンを水に浸けられ壊された。

④いじめにより転学等を余儀なくされた場合

○欠席が続き(重大事態の目安である30日には達していない)当該校へは復帰ができないと判断し、転学(退学等も含む)した。

 

 

 「いじめ防止等のための基本的な方針」では、「身体に重大な傷害を負った場合」「金品等に重大な被害を被った場合」「精神性の疾患を発症した場合」と書かれていました。「重大な」という言葉の内容が具体的ではなかったのですが、ここで具体的になりました。

 

 「身体に重大な傷害を負った場合」というのは、骨折・脳しんとう、歯が折れた場合、などが「重大な傷害」に該当するということでしょう。

 

 「精神性の疾患」としては、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)との診断」「嘔吐や腹痛などの心因性の身体反応が続く」ということが該当するということですね。リストカットも、「精神性の疾患」に該当するのかもしれません。

 

 「金品等に重大な被害」としては、「強要され1万円を渡した」「スマートフォンを壊された」ということが「重大な被害」に該当するということですね。

 

あらためて重大事態とは

 

いじめを受けたことにより次のような状態に陥っている場合

・学校の欠席が続く場合(30日が目安)

・児童生徒が自殺を考えて何らかの行動を起こした場合

・骨折などのケガを負った場合

・金品等に重大な被害を被った場合(1万円の被害が目安)

・心因性の身体反応などの精神性の疾患を発症した場合

・リストカットなどの自傷行為を行っている場合

 

こういった場合に、いじめの重大事態だと考えられます。

 

なお、上記のような状態よりも状況が良いと思われる場合であっても(例:欠席日数が少ない)、重大事態だと捉えて早めに対応を開始することが求められています。また、保護者から「重大事態ではないか」との申し出がある場合も、重大事態だと捉えて早めに対応を開始することが求められています。

 

重大事態についての情報へのリンク

いじめについて以下のリンク先もご参照ください。

いじめ被害での親の学校対応のポイント

次の3つのポイントを解説しました。・欠席の連絡では、「いじめの被害で辛い」と伝える、・いじめを行った子どもから謝罪を受けることは急がない。・学校に文書で気持ちや考えを伝える

 

いじめの根絶を目指す条例

茨城県いじめの根絶を目指す条例には、いじめ被害を受けた子どもへの支援、いじめ加害を行った子どもへの指導についても書かれています。条文に基づて解説しました。