不登校など学校に行きづらい子どもが増えています。令和4年(2022年)10月に発表された「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(文部科学省)」によれば、不登校の子どもたちの数は、小学生では81,498人、中学生では163,442人の合計244,940人となっています。前年度から約25%も増加しています。なお、令和元年度では合計181,272人、令和2年度では合計196,127人でした。
文部科学省や市町村教育委員会、それぞれの学校では学校に行きづらい子どもたちのために、色々な工夫を考えています。そのひとつが校内フリースクールです。

校内フリースクールとは
校内フリースクールとは、小学校や中学校の空き教室を活用して、教室に居づらい子どもや学校に行きづらい子どもたちが過ごせるような居場所を作って、担当する職員を配置して子どもたちのサポートを行う仕組みです。子どもたちは、自由な時間に登校してきて、担当の職員と相談してその日の活動を決めて、自分で学習したり教室の学習に(オンラインで)参加したり、友達と関わったりします。
今まで通っていた自分の学校の中にあるので、子どもたちにとっては利用しやすい考えられます。また、利用のための特別な費用はかかりませんし、出席日数にカウントされることも大きな利点だと考えられます。
校内フリースクールの特徴
- 担当の先生やスタッフがいて勉強や活動のサポートしてくれる
- リラックスできるような場所(じゅうたん敷き、ソファーなど)がある
- 利用している子どもが少ないため、落ち着いた雰囲気になっている
- 自分でその日に何をするかを決めて活動する
- 登校と下校の時間は決まっていないため、自分で決めて登下校する
- 給食を食べることができる
- 教室での学習や活動に参加することができる
- トランプやオセロなどちょっとしたゲームでも遊べる
- 部活動に参加することも可能
- 利用のための費用がかからない
- 出席扱いとなる
子どもたちの感想や反応
- 少人数で安心できる場所があると学校に来ることができる。
- 静かに自分のペースで学習ができる。教室はざわざわしている。
- 校内フリースクールがあったので,教室でしんどくなった時も家に帰らずに校内フリースクールに行くという選択肢が増えたことが良かった。
- 体がしんどい時,みんなと同じペースで勉強が,進められない時に校内フリースクールを使って自分のペースで勉強し,また教室に戻れるのが良かった。
- 授業の途中で教室から出たり,教室に入ったりするのは特に気にならないようになった。
- 校内フリースクールでは,周りの人に助けてくれる友達ができて笑顔になれる。友達が困ったときに助けてくれる。
- 人の気持ちを考えることができるようになった。
校内フリースクールと別室登校の違い
校内フリースクールと別室登校の一番の違いは、担当する職員が配置されているかどうかです。
別室登校は、空いている教室を一時的に居場所にするという面が強いため、担当してる職員はいません。担任の先生やたまたま空き時間になっている先生が対応してくれるだけです。そのため、利用している子どもたちとじっくりおしゃべりをしたり、時間をかけて勉強を教えたりすることは難しい場合がほとんどです。別室登校に通っている子どもたちが、自分一人で過ごすような時間が多くなりがちです。
校内フリースクールでは、キチンと予算をつけて職員を雇用しています。その職員は授業を担当したり、クラスの担任だったり、学校内のその他の役割を担っているわけではないので、校内フリースクールのことだけに時間を使えます。そのため、職員が子どもたちとおしゃべりをしたり、相談に乗ったり、勉強を教えたりすることにも時間をかけらられます。また、子どもだけでは、子ども同士の関係を深めていくことは難しい面がありますが、担当の職員がいれば子ども同士の関係をつなぐことも、できると思います。
別室登校については以下のリンク先をご参照ください。
子どもにとっての校内フリースクールのメリット
子どもにとっての、校内フリースクールのメリットは、なんと言っても自分の学校の中にあるということです。教室に行きづらくなった時や不登校になった時に、学校外の適応指導教室(教育支援センター)や民間のフリースクールも利用することができますが、それらは子どもにとっては知らない場所です。知らない場所に通うことは、少なくとも最初は子どもにはいろいろな負担がかかると思います。教室に行きづらい状態や不登校の状態になっているわけですので、ただでさえ辛い思いをしています。さらに負担がかかることを始めるのはなかなか難しいと思います。そういう意味で、自分の学校の中にある校内フリースクールは子どもたちにとっては利用しやすいと思います。
また、自分の学校の中にあることは、基本的に自力で通える範囲にあるということです。行きやすいということよりも、帰りやすいことが重要です。登校の時には、ある程度計画的に登校してくると思いますので、家族の誰かに送ってもらいやすいと思います。ただ、学校で過ごしているうちに疲れてしまって帰りたくなるなどのことは、良くあります。そういう予定していない時に、迎えに来てもらうのはなかなか難しいことが多いと思います。そういう場合にも、自力で通える範囲にあれば自力で帰宅できる可能性があります。それは非常に大切なポイントです。実は、自力でも帰れる場所にあるからこそ、いざとなったら帰れるという安心感が高まります。そのため、来るときのハードルが下がるのです。
また、自分の学級での学習や授業以外の活動にも参加しやすいという面があります。教室にいる仲の良い友達とも会って話す機会も得やすいと思います。こういったことも、子どもには大きな利点だと思います。
保護者にとっての校内フリースクールのメリット
保護者にとっても校内フリースクールは様々な利点があります。子どもが通う場所を探さなくて良いという点は大きな利点だと思います。学校外の施設や機関は色々ありますが、それを探して子どもに合うかどうかを考えて、実際に子どもを連れて行くなどして、子どもと一緒に検討することは保護者に大きな負担となります。
また、送り迎えの時間が(余り)かからないことや、行き帰りにトラブルが生じるのではないかという心配が少ないと思います。費用面でも、特別な負担はありませんので、それも保護者にとっては大きな利点だと思います。
最後に
こんなふうに、校内フリースクールは子どもたちにとっても、保護者にとっても、様々な利点があります。ぜひ、全国の全ての小中学校に開設してほしいと思います。
小規模な学校を複数組み合わせて、1人の職員が月(1日)、水(午前)、木(1日)はA小学校、火(1日)、水(午後)、金(1日)はB小学校に勤務して2つの小学校で校内フリースクールを開設するという方法もあると思います。今通っている学校に校内フリースクールがあることは、子どもたちにとってのプラス面が大きいと思いますので、ぜひ、組み合わせる形でも実施できると良いのではないかと思います。
また、職員には教員経験者だけではなく、心理職を雇用することも良い方法だと思います。例えば、スクールカウンセラーを常勤にして、週に2日は今まで通りのスクールカウンセラーとして仕事をして、週に3日は校内フリースクールをメインに仕事をするという方法も良いのではないかと思います。
この記事の執筆
半田一郎(公認心理師・臨床心理士・学校心理士スーパーバイザー)
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